黒テントの「世界の同時代リーディングシアター2010」を見て

 劇団黒テントの「世界の同時代リーディングシアター2010」と銘打ったシリーズで、「殺戮の神」と「ザ・ワンダフル・ワールド・オヴ・ディソシア」(以下「ディソシア」)の2本立てを見た。7月23日に神楽坂のシアターイワトで。
「殺戮の神」はフランスのヤスミナ・レザ作の登場人物4人だけの芝居。小山ゆうな演出。11歳の男の子2人の喧嘩をめぐって、彼らの両親たちが和解の話し合いをするために集まったが、次第に険悪になり本音が現れ、やがて各夫婦の不和と根本的な問題が暴かれるというもの。ポランスキーによる映画化が決定しているという。
 もう1本の「ディソシア」、イギリスのアンソニー・ニールソン作、横田桂子演出。ちらしの「解説」から、

 ルイス・キャロル不思議の国のアリス』を土台にした、しかしながらそこにセックスと暴力と精神の病を過激なまでに加味して作った作品、

「ディソシア」のアリスであるリサは、彼女の失った1時間を探すためにディソシアという国へでかける。そこはオカマのガードマンがいたり、レイプをしかけてくる山羊がいたり、アリスの世界のように不思議なことがたくさん起きる。リーディングシアターと言いながらずいぶんと動きのある芝居だった。リサ役の伊達由佳里がよかったし、彼女の歌はとくによかった。しかし、不思議の国のアリスと違って、リサの不思議の国は精神を病んでいる彼女の心の中のできごとだった。最後に明かされるそのことが芝居からクライマックスを取り去って、観客は何か半端な気持ちを持ちあぐんで劇場を後にすることになる。