今野敏「初陣」の読後感

 今野敏については、10日ほど前「今野敏『果断』が面白い!」(2010年7月2日)で紹介した。この警察小説は竜崎伸也大森署長を主人公として、「隠蔽捜査」「果断 隠蔽捜査2」「疑心 隠蔽捜査3」と続き、この5月にシリーズ4冊目の「初陣 隠蔽捜査3.5」が発行された。「3.5」というのは、本書が短篇集でここ4年間に渡って「小説新潮」に掲載されたものだからだ。さらにこれまで主人公は竜崎伸也だったが、本書では竜崎の幼馴染みで警視庁刑事部長の伊丹俊太郎が主人公になっている。今まで竜崎の視点だったのが、伊丹の視点に変わっているのだ。
 竜崎も伊丹も警察のエリート官僚=キャリア組だが、竜崎は東大法学部卒、伊丹は私大卒でそこには厳然とした格差がある。
 このシリーズでは謎解きのほかに、いつも性格の異なる二人の絡みが話を面白くしている。今回「初陣 隠蔽捜査3.5」でも事件の謎解きと二人の絡みの両方を織り込んでいるのだが、なにぶん短編のため、どうしても事件の謎解きが簡略にならざるを得ない。雑誌に年2、3回の掲載のため、いちいち二人の関係を紹介しなければならない。これは1冊にまとめられたときに少しうるさい。
 そんなことから、本書についてシリーズ中ではあまり高い評価を与えることができなかった。私の中での評価は、「果断」「隠蔽捜査」「疑心」「初陣」の順だ。
 今回も1日で読み終わった。単行本で1,575円、ちょっとコストパフォーマンスが低いのではないだろうか。


初陣 隠蔽捜査〈3.5〉

初陣 隠蔽捜査〈3.5〉

隠蔽捜査 (新潮文庫)

隠蔽捜査 (新潮文庫)

果断 隠蔽捜査2 (新潮文庫)

果断 隠蔽捜査2 (新潮文庫)

疑心―隠蔽捜査〈3〉

疑心―隠蔽捜査〈3〉