父さん、今調理している菜っぱの害虫なんだけど食べ跡で名前が分かる? そりゃあ難しいなあ。特殊なものでなきゃ分からないよ、どれ見せてごらん。その菜っぱはスーパーで買ってきたという小松菜だった。
なるほど、これはすぐ分かった。ナモグリバエの食べ跡(食痕)だ。ナモグリバエは成虫が葉っぱに産卵して孵った幼虫が葉の中(葉肉内)を食べ回る。それでこんな食痕ができるのだ。別名エカキムシ(絵描虫)。食痕を絵に見立てている。
父さん、この黒いものはカイガラムシ? いや、違うよ、これはナモグリバエの蛹だよ。ほっておくとここから成虫が孵るんだ。何、食べちゃえばいいんだよ、わずかばかりのタンパク質が小松菜に加わったと思えば。
やめてよ、気持ち悪い。
いや、カイガラムシって考えたなんて父さんの娘だね。普通の人はそんなもの知らないよ。何せ、父さんは昔「日本原色カイガラムシ図鑑」を編集したから。この本はもう絶版だから、Amazonで定価5,000円の古本が49,500円もしていた。