アスペルガー症候群、再び

 先日私もアスペルガー症候群であることを書いたが、朝日新聞2010年1月17日の書評欄に、横尾忠則がマイケル・フィッツジェラルド「天才の秘密」(世界思想社)を紹介していた。副題が「アスペルガー症候群と芸術的独創性」。ここにアスペルガーのちょっと片寄ってはいるが簡単な紹介がある。

 我こそは天才なりと自認、もしくは密かに天才性を誇る芸術家には、この本は自分のことを書いているという妄想を呼ぶ。この思いこみがすでに経度の自閉症アスペルガー症候群の人である証拠ともいえそうだ。
 しかし、心配ご無用。本書は芸術的天才性をもつアスペルガー症候群の人たちを嘲罵することも責めとがめることもない。むしろ、称賛するのが目的なのだ。といって彼らがすべて天才かというとそうとも限らない。文学や音楽や絵画などにおける資質にアスペルガー症候群の特徴がある、と言っているのだ。
 それはどんな特徴なのかというと、社会的に関心が薄く、虚飾を嫌う。またベートーベンみたいに無頓着なほど無防備で、かと思うと支配的で利己心が強く、バルトークのように子供のような純真性を持つ。そのうえ、不器用でがんこ、対人関係が苦手ときている。
 コナン・ドイルエリック・サティみたいに、宗教的気質を特徴とし、精神世界や魔術的なものに惹かれ、超自然やオカルトに傾倒する傾向もある。サティは技法的には無能でランク的には二流とされるが、この短所を長所に変えてしまう天才的能力が一方にある。彼らに特徴的な反抗的、反体制的資質がそれを可能にするのだろう。
 またアスペルガー症候群の人は狂的な収集魔でもある。特にアンディ・ウォーホルは物を捨てられない習癖が強く、自分がアートで何をすべきかもわからず、私の言いたいことは絵の背後にある、と発言した。

 まだ続くのだが、このようにアスペルガーの特質を分かりやすくまとめている。

アスペルガー症候群 (幻冬舎新書 お 6-2)

アスペルガー症候群 (幻冬舎新書 お 6-2)

 以前紹介した岡田尊司アスペルガー症候群」(玄冬舎新書)には、「いささかデフォルメされているとはいえ、ミスター・ビーンチャップリンが演じる蝶ネクタイの紳士は、アスペルガー的な不器用さの一つの典型を見事に表現している」と書かれている。
 服装や身だしなみが無頓着なのも特徴で、ビル・ゲイツがこのタイプだという。対人コミュニケーションが苦手なフローベールアインシュタイン高機能自閉症に分類されている。しかし、アスペルガー高機能自閉症を一緒に括る説もある。進化論のダーウィンもユーモアや冗談が通じないというアスペルガーの性質を持っていたと言われる。人よりも物に対する強い関心は、やはりアスペルガーの性質で、レオナルド・ダ・ヴィンチジョージ・ルーカスもこのタイプとされる。動きがぎこちなく運動が苦手というのもこの特徴で、チャーチルがそうだった。
 難しいことはよく知っているが、日常的な会話は苦手であるのもこの特徴ととされる。優れた記憶力によって、豊富な表現や語彙を覚えて、すばらしい文章を書くことができるが、その一方でスピーチが苦手だとされる。その典型がある有名作家の次男だろう。職場の同僚や先輩たちが、あいつは喋る脳と書く脳と、脳を二つ持っていると言っていた。