「ぼくらの頭脳の鍛え方」が面白い・2

  立花隆佐藤優の「ぼくらの頭脳の鍛え方」(文春新書)が売れている。副題が「必読の教養書400冊」で、それはすごいブックリストだ。同時にここで語られるエピソードが面白い。

佐藤  立花さん、蔵書数はどれくらいあるんですか?
立花  地下1階、地上3階のビルを仕事場にしていますが、10年ほど前に数えたときには、約3万5千冊でした。(中略)現在の正確な蔵書数はわかりませんが、10年で倍ぐらいになっているとして、7,8万冊でしょうか。佐藤さんはいかがですか?
佐藤  約1万5千冊です。(中略)立花さんは毎月、本代にはどれくらい費やしていますか?
立花  これも正確には把握していません。医学書や理系の専門書などを大量に買うときは、50万円くらい使うときもありました。しかし、それほど高くない本なら、両手で持てる重さの限界が、だいたい、3,4万円でしょう。月に4回それくらいの買い出しをするとして、十数万円じゃないですか。
佐藤  私は約20万円です。サラリーマン(外交官)時代も月10万円が本代で消えていました。

 私の蔵書が1,000冊くらい。本代は多い時で月に3万円くらいだった。今は1万円弱だろう。

佐藤  私の前の独房には、1審で死刑判決を言い渡されて控訴中の男が入っていました。それで、2人殺したんだけど、2人目の時は殺意はなかった、という話を延々と1人でしゃべっているんです。ある夜、その彼がプラスチックの食器を壁にぶつけながら、「死にたくねえよー」と大暴れしたことがあるんです。そのとき坂口(弘)さんは「そんな話は昼間裁判所に行ってしろ。先生(看守)たちに迷惑をかけるんじゃない」と一喝した。深夜、拘置所の幹部が、坂口さんの房に来て、深々と頭を下げて「ありがとうございます」と礼を言っていました。坂口さんは、「あの人、そろそろ限界だと思います。医療房に移した方がいいんじゃないですか」と言いました。しばらくして医療担当の職員が担架で前の房の人を連れ出していきましたよ。

 佐藤優坂口弘に対する評価は高い。

立花  天皇制が新憲法の2大柱というのもその通りで、僕の憲法論もその線で書いています。ただ象徴天皇制は「国民の総意制」といいかえてもいいんですが、これは、「国民の総意」によっては共和制に移行することも可能にする制度と読めますから、永久天皇制というわけではない。ではいずれ共和制(選挙による大統領制など)に移行したほうがいいのかといったら、僕は必ずしもそう考えません。選挙による大統領制があったとして、これまでの政治家で誰が文句なくその圧倒的な票を集め得たかと考えると、たとえば田中角栄であり、小泉純一郎ですよ。どちらも僕はいやですね。天皇制下の総理大臣になるくらいは仕方ないとして、純粋な国家のシンボルにだけはなってほしくないですね。天皇制があってよかったですよ。

 いや本当はもっとためになる話が多いのだ。ブックリストの充実ぶりも半端でない。読んで損はないだろう。

ぼくらの頭脳の鍛え方 (文春新書)

ぼくらの頭脳の鍛え方 (文春新書)