「画廊るたん」で林正彦展を見る

 銀座6丁目の画廊るたんで林正彦展が開かれている(11月28日まで)。林は1953年長野県飯田市生まれ。絵の具ではなく赤土を使って作品を作っている。ただ前回の個展あたりから麻袋(ドンゴロス)を使い始めた。今回からは漆も使っている。画面の黒色が漆だという。麻袋を使い始めるまでは赤土だけで構成された静かな画面だった。それが徐々に激しくなってきた。作家の内面に何か変化が起きているのだろうか。




 本展に寄せた美術評論家赤津侃の言葉から。

 林正彦の素材としての土との邂逅は何度書いても鮮烈さを失わない。イタリアはペルージア美術アカデミアに留学中の1970年代、古い町の壁に惹かれ、現代美術を凌ぐ美的部分を見つけ狂喜した。故郷の信州・飯田市に戻ったら、今度は赤みの強い土を使った土壁『中村壁』に魅了された。95年から土と対話し、土の持つイメージの喚起力を引き出す平面作りを始めた。さらに、地元の左官と「南信州新聞」村澤聡記者と共に幻の中村壁の探訪に乗り出した。(中略)
 いま林は”中村壁のアーチスト”と呼ばれ、赤や黒やブラウンの土を主にイメージを展開、進展させる。布の動静著しいうねりやたわみが目立つ重みのある広大無辺な層構造が定着した。土のやさしさと豊かさが、冷静な構築と堅固な構成で凝縮する。視線と意識は平面に引き込まれ、何度も往復し、日常的な視覚の記憶を超日常的な視覚経験へと変異させられる。(後略)

林正彦展
11月23日(月)〜28日(土)
11:00〜19:00(最終日は〜17:00)
画廊るたん
東京都中央区銀座6-13-7 新保ビル
電話03-3541-0522
http://www.gallerys.jp/town/tokyo/rutan/now.html