広島と東京のセミ

 テレビで広島市の原爆慰霊祭のニュースを見た。激しいセミの声が聞こえている。それはほとんどクマゼミのようだ。クマゼミは戦後北上を続けている大型のセミだ。数日後の長崎市の慰霊祭でも聞こえるのはすべてクマゼミのようだった。
 私の住む墨田区の公園でもミンミンゼミとアブラゼミ、それにクマゼミの鳴き声が聞こえている。クマゼミがもう東京まで進出している。目視によれば圧倒的に多いのはアブラゼミのようだが。
 終戦の日は必ずセミの声と重ねて描かれる。もし映画などでクマゼミの声を使ったら時代考証の間違いだ。いや単気筒のオートバイのエンジン音にマルチ(多気筒)のエンジン音を重ねた例があるのだから。
 さて、セミというと「ヒキガエルと蝉の空しい生」(2007年5月21日)のことを思い出す。生は不条理なのだ。