安藤元一「ニホンカワウソ」を読む

 昨年の2月20日「今日は獺祭(だっさい)」(2008年2月20日)というエントリーを書いた。ちょうど先日18日に、安藤元一「ニホンカワウソ」(東京大学出版会)を読み終わったところだ。副題が「絶滅に学ぶ保全生物学」、この副題がすべてを表している。
 著者はニホンカワウソは1990年代に絶滅したと言っている。

 高知県における1970年代後半から1990年代までの痕跡発見数を見ると、年を追って顕著な減少傾向が見られる(図=省略)。カワウソは1990年代になっても下ノ加江川に生息していたという情報もあるし、1990年代に海岸で有力な足跡を発見したというカワウソ調査員からの情報もある。もはや生息していると考えられなくなった2000年以降も、高知県環境保全課には年間数件の目撃情報が寄せられているが、確度の高い情報ではないという。後述するようにカワウソは誤認されやすい情報であるし、痕跡についても間違いが含まれているだろう。しかし、痕跡情報が確実に減少してきたのは確かであり、1980年前後の現象(ママ)傾向をそのまま延長してみると、痕跡数が0になるのは1990ー91年ごろである。このころには環境庁による大規模な生息調査が行われているが、それによっても生息は確認できなかった。

 ニホンカワウソは韓国を始め大陸に棲むユーラシアカワウソとは別種らしい。そのため日中で同一種であったトキのように単純に導入を計画することも難しいという。それに仮に再導入しても河川等の護岸工事が行われてしまっているから生息環境として全く適していない。
 生きているカワウソを最後に撮影したのは須崎市に住むカワウソ調査員の豊永哲史さんだ。新庄川でカワウソが泳いでいるのを見つけ、近くにいた釣り人から分けてもらった鮎を投げ与えて、それを食べる間に撮影したという。その豊永さんのことに本書が全く触れていなかったのが少し残念だった。

ニホンカワウソ―絶滅に学ぶ保全生物学 (National History Series)

ニホンカワウソ―絶滅に学ぶ保全生物学 (National History Series)