橋本治「蝶のゆくえ」を読む

 新潮社の季刊誌「考える人」2007年春号「特集 短篇小説を読もう」に橋本治高橋源一郎の対談が掲載されている。

高橋源一郎  『蝶のゆくえ』は、「小説すばる」に連載されているときからすごいなと思っていましたけど、単行本が出たときその圧倒的なすごさに驚愕して、書評にもそう書いたんです。

 こんなに絶賛されているから橋本治「蝶のゆくえ」(集英社文庫)を読んでみた。「ふらんだーすの犬」「ごはん」「ほおずき」「浅茅が宿」「金魚」「白菜」の6つの短篇を集めている。これがつまらなかった。裏表紙の惹句から。

10代で出産離婚し23歳で再婚した美加だが、新しい夫は息子に全く無関心だった。彼女もそんな夫に同調し、いつしか虐待が始まる……。突然、夫の両親と同居することになった37歳主婦のいらだち。定年退職した直後の夫をオヤジ狩りでなぶり殺された58歳主婦の孤独。現代に生きる様々な年齢の普通の女たちを鋭く描いた第18回柴田錬三郎賞受賞の傑作短篇集。

 なぜつまらないか。題名にその一端が現れていないか。ごろんと投げ出したような静的な普通名詞の題名。新聞の三面記事を題材にしたような風俗的な内容。それらのテーマが作者の内面と必然性を持って結びついていない。どうしてこれらのテーマを選んで書いたのか、それが分からない。上手なのにつまらなかった。

蝶のゆくえ (集英社文庫)

蝶のゆくえ (集英社文庫)