一昨日から根室に来ている。19日から1泊2日で帯広に来ていったん帰り、また22日から1泊2日で根室に来るはずだったのが、天候不順で東京に戻れず、そのまま根室で待機しろと言われてホテルで燻っている。
暇なとき読むために2冊の本を持ってきた。佐高信と橋本治だ。帯広で夕飯を食べるため街をうろついていて、小さな古本屋で加藤周一を買った。平凡社ライブラリーの「加藤周一コレクション2 日本文学の変化と持続」だ。もっと買いたかったが荷物になるのでやめた。
それが突然4泊5日になってしまった。持ってきた2冊はすぐ読み終わった。加藤周一を買ってよかった。そして昨日のテレビニュースが先月亡くなった加藤周一のお別れの会が開かれたと伝えていた。弔辞を大江健三郎と水村美苗が読んでいて、大江は加藤の「日本文学史序説」について優れた日本文化史であると称揚し、自分が死ぬまで加藤を読み続けると言っていた。加藤との往復書簡もある水村は「加藤のような人が二度と現れることがないのが悲しい」と言った。私も二人の意見に全く同意する。
しばしば日本語が論理的な表現に適さない言語だと言う人間がいる。加藤周一を読めばそれがどんなに無知な人間の言かよく分かる。加藤の文章は論理的で明晰であいまいなところがない。あいまいな日本語というのは日本語そのものに備わった特質なのではなくて、それを表現した個人の問題にすぎない。加藤周一を読むとそのことがよく分かるのだ。ときにあまりに隙がないように感じて居心地が悪いと思うことがあるのは、それだけ私が普段あいまいな世界にはまり込んでいるせいなのだろう。
一昨日の地吹雪が嘘のように今日の根室港は池のように穏やかだ。彼方には知床半島と国後島が見えている。国後の大きさが沖縄本島並みで択捉島が沖縄の3倍もあると知った。地理ばかりは現地に来て見ないと分からない。
明日の天気は良いようだ。ようやく東京に帰れるらしい。
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