川上弘美「ニシノユキヒコの恋と冒険」がつまらない

ニシノユキヒコの恋と冒険 (新潮文庫)

ニシノユキヒコの恋と冒険 (新潮文庫)

 川上弘美の「ニシノユキヒコの恋と冒険」(新潮文庫)を読んだが、これがつまらなかった。本書は連作短篇集。カバーの惹句から。

ニシノくん、幸彦、西野君、ユキヒコ……。姿よしセックスよし。女には一も二もなく優しく、懲りることを知らない。だけど最後には必ず去られてしまう。とめどないこの世に真実の愛を探してさまよった、男一匹ニシノユキヒコの愛となかしみの道行きを、交情あった十人の女が思い語る。はてしなくしょうもないニシノの生きようが、切なく胸にせまる、傑作連作集。

 何がいけないのか? 10人の女たちが皆とても似て見える。10代から40代と幅広い年齢の女が書き分けられていないのだ。そしてニシノユキヒコがなぜ女性遍歴を繰り返さなければならないのかが、説得的に語られていない。
 似た主題を扱った田中康夫の「三田綱坂、イタリア大使館」(河出文庫)や「昔みたい」(新潮文庫)の方がずっといい。現在、田中康夫の評価は低すぎると思う。

昔みたい (新潮文庫)

昔みたい (新潮文庫)