おかしなおかしな木村太陽展

 木村太陽展が京橋のギャラリーASK?で開かれている。正確には、木村太陽×ポル・マロ二人展だが。木村の展示は首都圏では2005年の横浜のヨコハマポートサイドギャラリー以来久しぶりだ。
 この作家は本当に変な作家で(いや、作品が)、どこからこんな発想が生まれるのか毎回びっくりしてしまう。今回は割合におとなしめだが、それでも女子高生の足を繋いだ立体や、バケツをレコードプレーヤーにしたもの、石で作ったケータイ電話器、壁に取り付けられたオブジェはたくさんの小さな動物の模型の足を切り取ったものだ。
 パソコンに繋いだモニターに流れる画像では巻きずしやにぎり寿司を作っている。なかなか美味しそうだが、これが石鹸とか絵の具とか要するに食べられないものばかりを具にしている。見た目は寿司そのものなのに。
 横浜のヨコハマポートサイドギャラリーで見た映像でもカレーで顔を洗っていた。長くドイツに行っていたようだが、10年ほど前は京橋のギャラリー山口で個展を繰り返していた。東京都現代美術館MOTアニュアルにも選抜されて、その時はビニールのゴミ袋をかぶった小父さん人形が何体もおしっこを漏らしていた。
 やはり10年ほど前小山登美夫ギャラリーで木村の作品のビデオを販売していて私も買って持っている。その内容を紹介すると、

1.一日オブジェ
 一日だけ学校の階段踊り場に設置、テレビ画面を石膏で埋め、ストローに光ファイバーを詰めたものをさし、電源を入れたもの。ストローの先からだけ映像が見える。
2.ハウス衝動
 自分の身の回りの日常会話を無断でテープに録音し、ワープロで起こし、シルクで風船に刷ってある。
3.一日テレビ電話
 一日だけ学校の公衆電話にテレビを密接させたもの。電話する人はテレビの騒音に悩まされる。
4.出口なし
 おもちゃの動くボールと動かないボールに30種の言葉のシールが貼られてある。動くボールが会場中をこの作品以外の空間にもどこと構わず転がり続ける。
5.潜在的脅迫観念壁
 お菓子のカールでできた壁。幅4.5m高さ3.8m。
6.無題(期待と不安をこめての)
 5.5mの廊下。ガーゼ地の簾で埋められている。中にテレビ設置。
7.摩滅量計測機
(コメントなし)扇風機に黒いビニールのゴミ袋が付けられていて、大きく膨らんで首を振っている。
8.自家中毒(又は数えられた羊達)
 中を膨らましたコンドーム900個で埋めてある。
9.ブラックホール
 高さ30cmのぬいぐるみにヘッドホンを300個埋めつけてあり、台座の中の13個のラジオの音を出している。無数の人の声が聞こえる。とにかくうるさい。
10.汚染
 身の回りの日常会話を無断でテープで録音、2m×8mのグレーのカーペットの上に同色の灰の言葉にしてのせる。誤って踏めば簡単に崩れてカーペットにとけこんでなくなる。照明の加減で、作品のまえに立つと手前の言葉が見えなくなるよう設定してある。
11.神様マシーン
 全部違う機種の27台のテレビの棚と壁との間に1m幅の通路があり、そこに入りビデオ5台から流れる映像で視界全部が覆われる。ものを食べる口の映像と食べたものをカメラに吐き真っ黒になる映像が2分ずつ延々と繰り返される。
12.ラジオ会話
 ラジオのヘッドフォンを食べ、口に含みながら電話で会話をするパフォーマンスビデオ。

 木村太陽は1970年神奈川出身。
 ギャラリーASK?
http://www.musabi.ac.jp/ampj/



〒104-0031
東京都中央区京橋3-6-5 木邑ビル2F
TEL 03-5524-0771
FAX 03-5524-0772
2008年1月13日〜24日(日曜休廊)
11:30〜19:00(土曜は17:00)