山本弘の作品解説(21)「3号病棟」


「3号病棟」または「第三病棟」、油彩F50号(90.9cmx116.7cm)
 1976年9月の飯田市勤労福祉センターでの個展に出品され、その後1995年7月の東邦画廊での山本弘遺作展にも出品された。
 題名は山本が入院していた飯田病院の精神科の病棟の名前、山本はアル中の治療のため入院していたが、精神科の患者たちと一緒の病棟の施錠された病室に入れられていた。この絵のモデルが本人なのか他の患者を描いたものなのか分からない。顔の感じは本人を思わせるのだが。東邦画廊の中岡氏はこれを山本弘の代表作だと言う。技法的にも優れているそうだ。
 似た題材の絵で、山本の住んでいたアパートの大家さんの半ば狂ったお婆さんを描いたものもあった。中岡氏の主張を聞きながら、こんな絵が代表作というのも辛いなあと思った。しかし、いつもながら山本は色彩も筆触も見事だ。

 (遺族所蔵)