立川談春「赤めだか」が面白かった

 立川談春の「赤めだか」(扶桑社)は評判どおり面白かった。談春は中学生のころから競艇選手になりたくて、サングラスをかけ髭を描いて競艇場に入り浸る。しかし高校1年のときに身長が172cmになってしまう。競艇選手は170cm以内でないと書類審査が通らないのだ。
 ついで談春は落語に熱中する。弟子入りするなら志ん朝か談志だと決めていた。

立川談志芸能生活30周年記念の会」は三宅坂国立劇場で行われた。僕は、談志、小さん、円楽、円鏡と並ぶ、口上が見たくて出かけた。そこで初めて談志の落語を聴いた。芝浜だった。
 人生で受けた最初のショック、あれ以上の驚きは以後ないので最大とも云える。(中略)
 聴く者の胸ぐらをつかんでひきずり回して自分の世界に叩き込む談志の芸は、志ん朝の世界とは全く別物で、聴き終わったあと僕はしばらく立てなかった。好き嫌いや良否を考えるスキも与えてくれない50分が過ぎたあと、思った。
 志ん朝より談志の方が凄い。(中略)
 談志の弟子になろうと決めたのはその時だった。

 談春を始め落語家の弟子たち(二つ目)の生活がハチャメチャだし、談志もとんでもない人物なので、エピソード豊富でとにかく面白い。最後に談春が真打ちになるところで自伝は終わる。
 さて、談春の落語は聴いたことはないが、さすが落語家なので面白く書かれている。しかし専門の書き手ではないので、エピソードの結末が書かれていないことはしばしばだし、本来張るべきところに伏線が張ってない(だから話が唐突に語られる)。さらに自己評価が甘い。と、まあいろいろと欠点はある。
 しかしながらラストに感動的な話が待っている。読むことをお勧めする。
 もう一つ付け加えると、談志の落語ってそんなに凄かったっけと思って、CDで「粗忽長屋」と「らくだ」を聴いてみた。上手いとは思ったが凄いとまでは思いかねた。