差別に関する娘との会話

 父さん、私ね自分に差別意識があることに最近気づいたのよ。どんな差別なんだい? 男の人を差別してるの。無意識のうちに女の人が優秀で男の人は一段低い人間だと思いこんでいたの。それに最近気がついたのよ。私は自分が女と言うより男に近いと思っているから、自分のことを優秀なんて思っているわけじゃないのよ。私がどうしてこんなことを思うようになったか考えてみたの。そしたら分かったの。何だったんだい?
 それはね、父と母の関係だったの。父さんて家の中のこと何もできないじゃない。私が小さい頃、父さんお腹減ったって言って私がお菓子のあるところを教えてあげたじゃない。家では母さんがなんでもしてたじゃない。私男の人って何もできない劣った人間だって思いこんでいたみたいなの。だから父さん外でちゃんとやれるのか心配だった。それで無意識のうちに差別意識を持ってしまっていたのよ。
 娘とそんな会話をするひと月くらい前に、オバマが大統領になったら黒人を差別している白人に暗殺されるかも知れないよと話したことがあった。どうして黒人だってだけで差別されるの? と聞くから、元々アメリカでは黒人は奴隷だったんだ、奴隷は人間ではないし、その時の記憶を持っている白人達がいるんだよ。インドでも最下層のアンタッチャブルは人間とは見なされていなくて、床掃除する彼等の前で高いカーストの婦人が平気で着替えをするんだって。どうしてそんなことができるのか質問した日本人女性に、彼女は家畜の前であなたは恥ずかしがるの? と答えたそうだ。戦後イギリス軍の捕虜になった日本人も、女性将校が捕虜の日本人の前で平気で着替えるのを見て驚いたが、彼女も日本人なんか人間だとは思っていないから恥ずかしさは感じないのだ。差別意識はそんなにも深いのだと話してやったことがあった。