季刊雑誌「考える人」2008年夏号が面白い

 新潮社の季刊雑誌「考える人」2008年夏号がとても面白い。特集が「小説より奇なり! 自伝、評伝、日記を読もう」で、辻邦生の1968〜69年のパリの日記が紹介され、丸谷才一へのインタビューは「伝記はなぜイギリスで繁栄したか」、橋本治へは「日本人にとって日記とは何なのだろう」、最相葉月へのそれは「ノンフィクションと本格評伝のあいだ」、なかなか読みごたえがある。
 お勧めの「この一冊」は養老孟司ツヴァイク昨日の世界」、小池昌代がオコナー「存在することの習慣」、横山貞子がディネセン「アフリカの日々」、千葉成夫が堀田善衛ゴヤ」四部作、武藤康史中野好夫「蘆花徳冨健次郎」、水野忠夫がドイッチャー「トロツキー」三部作、鹿島茂獅子文六「娘と私」、坪内祐三が山下恒夫「石井研三」、大井玄がミルン「自伝 今からでは遅すぎる」、若島正が「ナボコフ自伝 記憶よ、語れ」を挙げている。
 そしてアンケート「私の好きな自伝、評伝、日記」では32人が回答をしている。お陰で読みたい本が30冊もできてしまった。
 この雑誌「考える人」は特集が面白く、2008年春号が「海外の長編小説ベスト100」、2007年夏号が「続・クラシック音楽と本さえあれば」、2007年春号が「短篇小説を読もう」と、何だか昔の「マリ・クレール」を思わせる企画が続いている。
 2008年秋号が10月4日発売だから、「自伝、評伝、日記を読もう」の夏号はもう書店にないかも知れないが。