1度だけ行った銀座の高級画廊

 一般の人が画廊って敷居が高くて入りづらいとよく言うけれど、そんなことはありません。画廊はどこでも初めてのお客さんを歓迎してくれるし、最初から絵を売りつけようなんて考えてはいません。ラッセルやヒロ・ヤマガタを扱っている一部特殊な画廊を除いて。
 と書きながら1軒変わった画廊があったのを思い出した。以前銀座7丁目にK画廊というのがあった。十数年前画廊を見つけると闇雲に入っていた頃、このK画廊にも1回だけ入ったことがある。銀座並木通りに面した路面店、1階の道路に面した贅沢な画廊だった。
 入口のドアを開けると目の前に壁があって、店内を見ることができない。壁を右から回り込んで室内に中に入ると、ダークスーツを着た画廊主だかスタッフだかがお客さんらしき人と話していた。その人が振り向いてじろっと私を見た。愛想は微塵もなかった。高そうな日本画が数点壁に掛けてあって、いかにも私は場違いで早々に退散した。
 そのことを別の画廊の方に話すと、Aさん「あそこは外商で大もうけしているから派手な店を開いて経費を出しているんだよ」、Bさん「あの画廊はヤクザなんだよ、行かない方がいいよ」
 それっきり二度とそこには近づかなかったので、本当のことは分からないが、いつの間にかもうK画廊はなくなっていた。ここに限らず高価な美術品を扱う画廊は一見の客を歓迎しないのも当然だが。