「空有」という不思議な概念


 自転車で帰宅途中、ふと駐車場のプレートが気になった。「気になった」のは明確な「私の意識」ではなく、むしろ半意識というか、蓄積された脳内のデータベースが反応したのではなかったか。駐車場の壁のプレートの「空有」という文字に。

「空有」とは「空き有ります」の意味で、「空いている駐車スペースがあります」と言っているのだろう。この「空」は「無」であり、すると「空有」は矛盾した概念ではないかと脳が思ったようだ。そう考えたので、自転車で走る一瞬に反応したのだろう。何が引っかかったのかと立ち止まって考えて、以上のことが意識されたのだった。
 意識は隅々まで明澄だというサルトルの考え方には疑問を持たざるを得ない。