シランという花、過剰な敬語

mmpolo2008-05-29




 小学校5、6年生の頃の担任が宮嶋先生と言った。ある日宮嶋先生はわれわれに、みんなはこの花の名前を知っとるかと聞いた。われわれ一同は「知らん」と答えた。先生はそうだと言った。この花はシランという名だ。それ以上のことを教わったかどうかもう憶えていない。シランは漢字で書くと紫蘭、ラン科の多年草で最も栽培がやさしいランだ。
 われわれは「知らん」と言った。われわれの田舎では先生に対してもこれ以上の丁寧な言葉を使わなかった。そのような環境、地域だった。長じて敬語を覚えたものの、目上の人に対して親しみを憶える相手であれば、敬語を使うことがいささか憚られた。作られた丁寧さに思えてしまうのだ。だから近ごろの過剰な敬語の使い方に反感を感じてしまう。
 さすがに最近は私の田舎でも子どもたちは大人に向かって「知らん」とは言わないだろう。知らないと答えさせておいて、知っているじゃないかという遊びがもうできない。