旗本三千石阿島藩の家老の息子

 山口君、いやツトム君ではなくて、小学校時代の級友だった。彼は信州南部の旗本三千石阿島藩の家老の息子だった。まあ江戸時代が続いていたらだが。藩主は知久氏。武田信玄とも闘った戦国時代から伝わる名家だ。
 知久氏はしかし京をめざして進んできた信玄に破れてしまう。その後信玄は病没し、上洛をやめた武田軍は兵を甲州に引き上げる。関ヶ原の後で天下を取った家康は、信玄と闘った知久氏を取り立てて阿島藩を預かる旗本とする。で、山口君はそこの家老の息子だった。
 さすがに家は立派だった。三千石とはいえ、旗本の家老なのだ。しかしながら山口君は学校の成績が悪かった。江戸時代が終わって良かったなあと心底思った。世襲が辛い人もいるのだ。