銀座にシロアリのスウォーミングを見る

 4月29日の休日は例によって画廊を回る。銀座から始めてすぐにシロアリのスウォーミングに出逢う。何やら虫がたくさんゆっくり飛んでいるので、これはシロアリのスウォーミングではと近くを探すと、コンクリートの割れ目から沢山の羽アリが出てくるところだった。見ている内にどんどん増えて写真のようになった。

 スウォーミングは結婚飛行とも言われ、年に1回だけ将来の女王と王の候補が地下の巣から地上へ出て来て番(つがい)を探す。相方を見つけると羽を落としたカップルは隙間を探して巣作りをする。東京ではこのヤマトシロアリが一般的で、このビルの地下には数万頭のコロニーがあるはずだ。ヤマトシロアリのスウォーミングは、普通4月末から5月初めの雨が降った翌日などの晴れて暖かい風のない日の午前10〜12時頃だ。ここはビルの間で日陰になっているので少し遅れて12時過ぎだった。そして1時間後にはもう姿を消していた。シロアリは必ず毎年スウォーミングをするので、来年の今頃ここで待機していればまた見られるだろう。そうでもしないとめったに見られるものではない。私だって27年間に数回しか出逢っていない。
 ちなみに九州や四国南部、和歌山などには、イエシロアリという凄いヤツが分布している。被害の大きさは比較にならない。コロニーも100万頭に達するものがある。九州の白蟻防除業者に言わせると、ヤマトシロアリなんかかわいいものだ、1年間放っておいても大して被害は拡がらない。それに比べればイエシロアリは1日早く防除すればそれだけ被害を少なくできる。
 ヤマトシロアリの被害が小さいとは言うものの、阪神大震災で倒壊した家屋の多くがこのシロアリの加害を受けていて、そのために倒壊したとの説もある。
 ちょうど27年前、依頼されてシロアリの映画を作った。その時クライアントから、スウォーミングのシーンは絶対撮るようにと言われた。どうしたら撮れますか? 東京だったら4〜5月の降雨後の晴天の昼近くあちこちで発生するよ、待機していて発生したと聞いたら撮影に行けばいい。スウォームは何時間続くのですか? まあ1時間以内だな。それではとうてい撮影することはできない。それで毎年必ずスウォーミングで地面が真っ白になるくらいイエシロアリが発生するという小笠原にカメラマンを一人派遣した。彼は3週間粘ってすごい映像を撮影してきた。おそらく何億というシロアリで地面が文字通り真っ白になり、道路ではシロアリを食べようとガマガエルが口を開いている。ようやく「シロアリの話」を完成することができたのだった。