毎日新聞に紹介された俳句のこと

 4月13日付けの毎日新聞の読書欄「今週の本棚」に俳句が小さく紹介されていた。まず装幀家が本業の間村俊一の「句集 鶴の鬱」(角川書店)から

 (間村の)句柄には、この世とあの世のあわいに遊ぶかのごときものがある。


天上に瀧見しことや鶴の鬱


かりがねや贋金づくりにも厭きて


春深し卍に開く人の妻

 この「開く」は他動詞だろうか。
 ついで俳人の鷹羽狩行の「好きなもの」というエッセイから

 ところで「日本国語大辞典」(小学館)を開いたら、歳時記の解説にはない意味があるのを見つけた。「朝顔」にはあの花の名のほかに、寝起きの顔、女性の交情の翌朝の顔という意味もあったという。すると次の句など、あっさりとは読み過ごせないことになる。


朝顔やすでにきのふとなりしこと   鈴木真砂女

 鈴木真砂女は激しい恋をした人。銀座1丁目のフタバ画廊の近くに彼女の店「卯波」があった。一度も入らない前に俳人は亡くなり、最近地上げされて甥が継いだ店も無くなった。
 句は深い意味を抱えているものなのか。その意味をたやすくは開示しないものなのか。山口誓子の有名な句


海に出て木枯らし帰るところなし


は、名句だと思っていたが、特攻隊を読んだ句だと知ってその意味の深さに驚いた。俳人は己の句への理解に対してそんなにも禁欲的なのか。