酒匂譲展がすばらしい

 酒匂譲展が銀座5丁目のみゆき画廊で開かれている(2月2日まで)。これがすばらしい。酒匂譲さんは現在78歳、東京家政大学名誉教授だ。本来なら巨匠なのにあまり有名ではないのはなぜだろう。私の想像だが、大学が美大としては傍流なこと、女子大なので先生を持ち上げる有力な弟子が少なかったことではないだろうか。1976年から毎年みゆき画廊でもう30回以上個展をしている。しかし、みゆき画廊以外での発表はほとんどない。このお年で停滞ということがない。年々少しずつ絵が変わっているのだ。もちろん良くなっていく。
 色彩が美しい。形が力強い。マンネリにほど遠い。私はこれらの形容詞を別の有名な画家たちと比べて並べているのだが、具体的な名前を出すのは品に欠けるので抽象的にこう言っておく。
 とにかく見れば幸福になる抽象画だ。
 みゆき画廊 http://www2.big.or.jp/~miyuki/f.html


 酒匂譲さんの反対が駒井哲郎だろう。いや作品の質の話ではない。駒井の弟子が中林忠良だ。そして現在活躍している版画家の多くが中林の弟子なのだ。彼らにとって駒井は大先生に当たるのだ。駒井哲郎の版画の値段が亡くなって20年余りで10倍にも高騰したのはそのためだとある画商さんが教えてくれた。