安田弘之「ちひろ」を読んだ

ちひろ 上
「読売新聞読書委員が選ぶ2007年の3冊」に西洋美術史林道郎安田弘之ちひろ 上・下」(秋田書店)を推していることは先日のブログに紹介した。(id:mmpolo:20071224)
 「ちひろ」について林は「歌舞伎町の風俗嬢の物語。生々しい描写が多く"R指定"だが、悲しくて滑稽でたくましい人間の性(さが)に感じ入る。上巻138〜9頁の雪景色は、漫画史に残るだろう。広く、冷たく、暖かい。」と紹介している。
 購入して読んでみた。帯に「待望の復刊!!」とある? 絵にも見覚えがある。そうだ、日記を検索するとちょうど4年前初版で読んでいた。内容は忘れていたが。
 しかし良くできたコミックという以上の作品ではない。林道郎さんの批評眼を疑ってしまう。ちひろはいわばスーパー風俗嬢なのだ。それも男の眼から見た。男が理想とする決して汚れない風俗嬢。男の願望だ。ありえない。漫画史に残るという雪景色も凡庸な絵にしか見えなかった。傑作というのは吉田秋生「海街diary1 蝉時雨のやむ頃」(小学館)であって、これらを決して並べてはいけない。安田弘之の線もきれいではないし。
 上下巻2冊、1,800円近くも出して買うんじゃなかった。