ギャラリーアポロの伝える「今年一年の美術界を振り返って」から

 銀座1丁目のギャラリーアポロでは画廊主の秋山修さんの書くニュースペーパー「APOLLOMEDIATE」を毎月発行している。昨日届いた12月号のタイトルが「今年一年の美術界を振り返って」これが面白かった。

 今年は一口に言って、”激動の年”だった。(中略)激動の一つ目の理由は今年の2月から4月にかけて画商の倒産が相次いだことである。2月、名古屋のA画廊に始まって、4月迄、新潟のMギャラリー、栃木県のF画廊と岡山県のK画廊が自己破産を申請、そして銀座のU画廊主が失踪した。(中略)
 5社の負債総額はぼくの計算によると、約16億円で、直接取引のあった画廊は勿論のこと、画商界はこの金額を吸収するのに、相当の時間を必要とした。
(中略)
 そして10月に入ってからは、一方、株価の低迷が続き、春に18,000円台をつけていた日経平均が11月の20日には15,000円台を一時割るという金融経済の縮小が起こり、美術品の相場全体が急速に落ち込んだ。(中略)
 特に値下がりの激しいのが平山郁夫で、それは版画・水彩・日本画のすべてに及んでいる。10月のS交換会で、平山郁夫の6号の塔の絵(最も人気のある図柄)が1,200万円で落札されたと聞いた時は、ぼくも本当に驚いた。春先の半値近く迄下落した感じがしたからである。水彩画も昨年迄は300万円台が主流を占めていたのに、現在は200万円台、作品によっては100万円台に迄下落している。版画の落ち込みも勿論激しいというのが現状だ。
(中略)
 梅原龍三郎・林武・小磯良平・・・国内でマーケットはあるけれど、全く諸外国で見向きもされないものにアートとしての値打ちはあるんだろうかと思う。戦後文化勲章をもらった画家は山程いると思うけれど、その中で、世界的な評価を得ているのは棟方志功只一人である。このことはよく覚えておいた方がいいと思う。(後略)

 この「APOLLOMEDIATE」には、昨年私の「小磯良平と山口長男」も掲載してもらったのだった。