アートスペース美蕾樹、そしてアラーキー、空山基

 渋谷にアートスペース美蕾樹(ミラージュ)というユニークな画廊があった。オーナーは越生あき子さん、年齢不詳の女性だった。元不忍画廊出身、不忍画廊は羽黒洞から分かれているから、老舗の羽黒洞の孫画廊とも言える。羽黒洞にはジョン・レノンが買い物に行っている。不忍画廊は池田満寿夫を扱っている画廊だ。この美蕾樹が昨年夏に突然画廊を閉じてしまった。画廊のコンセプトは推測するに、エロス、SM、同性愛ではなかったか。とにかく過激な画廊だった。アラーキーがメジャーになる前にここで写真展をしている。個展の途中荒木番だという3人の刑事が来て、写真の展示の中止を命じられる。それで、壁から外した写真のパネルを後ろ向きに立てかけ、見たい人にひっくり返して見てもらったという。15年ほど前にマッケローニの写真展も開催した。これは女性器をアップで写したものらしい。小学生だった娘をつれて近くまで行ったのだったが、まさか娘をつれて行くわけにはいかなかった。
 実際に見たのはアラーキーの写真で、カタツムリを這わせていた。女性器の中にカタツムリの殻を入れ、そこからカタツムリが体だけ出していたり、勃起した男性器にカタツムリを這わせていた。さすがアラーキー、普通こんな発想は誰もしない。
 アラーキー番の刑事が付かなくなったのは、ベネチア・ビエンナーレに彼が招待されて以後だと画廊主が言っていた。
 刑事と言えば、セクシーロボットのイラストレータ空山基も刑事がマークしていたらしい。イラストレーター仲間が一番巧いとほめる空山は、個人的な趣味で女性器を描いたヌードのイラストを、ポストカードに印刷して関係者に配っていた。私もたくさんもらった。彼もやはりソニーのアイボをデザインしてから刑事のマークが外れたそうだ。空山はミッキーマウスのロボットを作りたがっている。ディズニーの許可はもらっていると言うが、ソニーが降りてしまったと残念がっていた。どこかの企業が企画しないものか。