国立近代美術館の平山郁夫展を見た

 竹橋の国立近代美術館で今やっている平山郁夫展を見てきた。平山をきちんと見るのは初めてだ。人気のある画家でシルクロードを描いたシリーズは中高年のファンが多い。ゆったりと砂漠を行くラクダの隊商が大きな画面に穏やかな色調で描かれている。絵を見ている人たちの囁き合っている声の調子から、その人たちが満足しているのが伝わってくる。
 でも、どうしてそんなに楽しめるのだろう。テーマはシルクロードだ。廃墟となった寺院や城塞、古い都、それらを分かりやすく描いているからだろうか。描写に優れているわけでもないし、色彩も凡庸だ。少しも面白くない。一時期並び称されたという横山操、加山又造の3人の中では一番つまらないのではないか。せめて小磯良平のような巧さがあれば。
 奥入瀬を描いた大きな作品があった。平山郁夫展を見終わって覗いた3階の常設展に、同じ奥入瀬を描いた安井曾太郎の小さな作品があった。この小さな安井の方がずっと良かったし、以前見た奥田元宋奥入瀬ももっと良かった。
 平山郁夫は1930年6月15日に生まれている。今年77歳だという。わが師山本弘も平山と同じ日に生まれている。同い年なのだ。しかし誕生日と職業が同じなだけで、全く違う人生を歩んだものだ。山本弘は生涯無名でアルコールに溺れながら絵だけを描いて51歳で命を絶った。今でも故郷では単なるアル中の画家にすぎない。
 だが、本当に優れた画家がどちらだったのかは、いずれ明らかになるだろう。