高浜利也、きれいすぎる仕上げの問題

 今泉雄四郎さんは銀座の画廊をよく見て回っていた。若い作家の個展をていねいに見ていた。先代の社長の頃の東京画廊の番頭さんのような立場だった。それは半端な地位ではない。
 銀座のギャラリーなつかで高浜利也展を見たとき、たまたま今泉さんが一緒だった。高浜利也は版画家だが木を使った立体も作っている。同じ形を版画と立体で作っていた。その木の立体を見て、今泉さんが仕上げがきれいすぎるなあと言った。彼(高浜利也)は仕事が大工だからなあと。
 仕上げがきれいなことが問題になるとはこの時まで思ってもみなかった。いや、今でもなぜそれが問題なのか分からないでいる。雑な仕上げの仕事は作品を見るときに、そこに、つまりノイズに目がいってしまうのに、きれいなら仕上げを通り抜けてまっすぐ作品に対峙できるのではないか。
 いまでも分からないでいるのだが、他ならぬ今泉さんが言ったことなのだ、考えなければならない。