AD経験者は絶対にお買い得、新卒が使いやすい話

 求人の募集をして入って来たのは、それまでテレビ局の下請けの制作プロダクションに勤めていた女性だった。外語大学でヒンズー語を専攻し新卒で制作プロダクションに入ったのだという。1年間AD(アシスタントディレクター)をやってきたが、大変なので転職することにしたという。毎日深夜まで残業があり、日曜出勤もまれではなく、1週間会社に泊まり込んだこともあったという。若い娘が帰宅しないで1週間会社に泊まり込む! それってすごいことではないか。そんなに働いて給料は特に良いわけでもなく、残業代は全くつかないという。
 入社してきたその子の働きぶりは大したものだった。とにかく気が回る。それも半端じゃない。つねに先のことを考える。体を動かすのを全く厭わない。アシスタントディレクターの仕事は言われる前に気づいて雑用をこなすというようなものらしい。私は断言したい。アシスタントディレクター経験者がいたら、優先的に採用すべし。絶対にお買い得です。特に今また求職中らしい麻衣子さんは。
 企業にとって、新卒の魅力はどんな過酷な労働条件であってもそれを疑わないことだ。他の職場を知らないからそんなものだと思ってくれる。
 慶応の経済を卒業して一流企業に入社し、そこの工場の経理に配属された(これって出世コース)知人は、入社した日から退社するのは毎日深夜零時過ぎで、それが何か月も続いた。寮が工場に近接していたから可能なのだが。さらに入社後1か月間は毎朝始業30分前に出社して工場の門の前に整列し、出勤してくる工員たちに挨拶させられている。顔を覚えてもらうという名目のために。そんな風習が疑われないのだ。新卒は素朴で使いやすい!