ネガフィルムとポジフィルムの大きな違い

 ちょっと古い分野かもしれないが、写真のフィルムの話。娘が小学生の頃、明後日クラスの発表で使いたいからお相撲の切手を写真に撮ってと言う。翌日の昼休み、チャチャっと撮影した。もちろん接写のセットを準備して、普通のカラーネガで。失敗している時間がないので、適正露出、2絞り絞った露出、2絞り開けた露出の3カット撮影して、近所の1時間で現像できる現像所へ出した。結果を見てびっくりした。3枚のカラープリントは、違いが全く分からない。絞りをプラスマイナス2絞りも変えているのにだ! ポジフィルムだったらあり得ないことだ。ポジフィルム(スライドフィルム、リバーサルフィルム)は露出に敏感だ。半絞り変えても色が違う。このカラーネガのように2絞り変えたら真っ暗か真っ白になってしまう。今さらながらネガカラーとカラープリント技術の進歩に驚いたのだった。
 そんな状況でポジフィルムの価値は何か。ポジフィルムは適正露出さえ与えれば絶対的な色再現ができるのだ。ネガフィルムはどうか。露出が2絞り違っても同じような色再現ができる。しかしプリントするごとに微妙に色合いが異なる経験をすることになる。つまりネガカラーの色再現は安定しないのだ。絶対的ではあり得ない。
 そう言う意味でネガフィルムはデジタルカメラによく似ている。デジカメの画像は絶対的であり得ないのだ。モニターによっても、プリンターによっても違うのだ。露出が違っても容易に修正できてしまう。ポジフィルムの絶対的な色再現を懐かしむのである。


 もう少しポジフィルムの話。ポジフィルムには2種類あった。外式と内式だ。フジもコニカコダックもほとんどのポジが内式で、現像時に発色剤を入れる外式はコダックのコダクロームだけだった。ISOが低くて使いづらかった。KMがISO25、KRがやっとISO64だった。しかしその解像力のすごいこと! 浅井慎平は35ミリのKMで撮ってB全のポスターに伸ばしていた。それを可能にするフィルムだった。惜しむらくは緑の発色に難があったが。