本の最後のページに書名や著者名、発行所などが印刷してあるが、これを奥付という。普通は発行日、著者名、発行所、印刷所などが記してある。本によっては、さらに印刷日、発行者(発行所の社長名)なども併記されている。昔は印刷者(印刷所の社長名)も記されていた。
印刷日は発行日より10日ほど早いのが一般的だ。実はこれらは戦前の検閲制度に関係がある。詳しくは知らないが、戦前は本を発行する前にまず見本を警察へ提出して検閲を受け、警察の許可が得られてから発行した。それで印刷日を記し、それから10日ほど後の発行日を記したようだ。
発行者と印刷者の個人名を書かせたのも、違反があったときの責任者を明らかにさせたもの。印刷会社の社長も罪に問われたのだ。
印刷日を記入している例もいまだにあるが、さすがに印刷者を記している例はほとんどないと思う。
このように印刷日を記す根拠は戦後すでになくなったが、惰性かまたは無知でまだ記入しているところがあるのだろう。発行者の個人名もいらないのだが、ここに名前を出して少しでも世間に名前を売りたい経営者もいるようだ。
昔ある社団法人の創立40年史の編集を手伝ったことがある。その団体の総務部長が編集委員長になっていて、過去の行事の写真を選ぶ時いつも自分が写っている写真を持ってきて載せたがった。定年間近の部長は、こんなにも自分を露出させたいものなのかと印象に残った。
ただその部長が一介のサラリーマンならそんなせこい売名行為もしたいのかと思うが、この人はそこそこ有名な現代詩人でその後詩人協会の会長も勤め、亡くなったときには新聞の訃報欄に掲載されたほどだった。