鉛の塀
川崎 洋言葉は
言葉にうまれてこなければよかった
と
言葉で思っている
そそり立つ鉛の塀に生まれたかった
と思っている
そして
そのあとで
言葉でない溜息を一つする
ほん
谷川俊太郎ほんはほんとうは
しろいかみのままでいたかった
もっとほんとのこというと
みどりのはのしげるきのままでいたかった
だがもうほんにされてしまったのだから
むかしのことはわすれようとおもって
ほんはじぶんをよんでみた
「ほんとうはしろいかみのままでいたかった」
とくろいかつじでかいてある
わるくないとほんはおもった
ぼくのきもちをみんながよんでくれる
ほんはほんでいることが
ほんのすこしうれしくなった