輸入は8倍が常識、つまり原価はたったの1/8

 中小企業専門の税理士を知っていた。税理士は仕事の関係で経営者と直接話し合う。経営者の趣味の話も出るだろう。税理士の彼は、中小企業の経営者たちからヨーロッパへ行っていろいろの品物を買い付けてくることを依頼される。あるいは彼が積極的に注文を取る。何人かのクライアントからの依頼がまとまるとヨーロッパへ買い付けに行く。これは堅い商売だ。注文をとってから買い付けに行っている。無駄がない。エミール・ガレのガラス器やバイオリン、ワインなどが多かったという。ワインは3年目くらいのまだ安いものを買い付け、自宅の地下に作った貯蔵庫で寝かせて高くなった7年目くらいに転売する。
 原価ってだいたいいくらくらいなんですか? 外国へ行って買い付けてくるというのは経費が馬鹿にならないから、日本国内での販売価格は普通現地価格の8倍が常識です。「8倍が常識」だって!
 ある社長さんに頼まれてエミール・ガレのガラス器をたくさん買ってあげた。何年もかけてだけれど。全部で5億円くらいのガレがあったのだが、その人が亡くなったとき、息子さんはガレに全く興味が無くて、骨董屋を呼んで4千万円で売ってしまった。高く売れたと喜んでいたみたいだけれど残念なことをした。
 原価は1/8が常識なんて、常識にも顕教的常識と密教的常識があるらしい。