中国やインドの絵画バブルが飽和状態に達し、あとは売り抜ける段階にきているという。それはそうだろう。アジアの現代美術の若手〜新進画家の絵が1点1億円ではこれ以上もう上がりようがない。欧米のオークション会社は今年から日本の現代美術にシフトするらしい。
それでは日本でも村上隆、奈良美智、杉本博司に続く1億円画家が現れるのだろうか。現れるとしたらそれは誰になるのだろう。方向としては抽象ではなく、具象的な方向ではないだろうか。もちろん写実などではない。
戦後アメリカでバーネット・ニューマンやジャクスン・ポロック、マーク・ロスコなど抽象表現主義が現れて世界を席巻したときも、それらが決して売れたわけではなかった。抽象は難しいのだ。大衆には理解できない。売れることを期待する方が間違っている。実際売れたのはその後に出てきた分かりやすいポップアートだった。マリリン・モンローの肖像やキャンベル缶スープのシルクスクリーン作品を作ったアンディ・ウォーホル、国旗や数字を描いたジャスパー・ジョーンズ、東京都現代美術館が5億円で買って話題になった「赤いリボンの少女」のリキテンシュタインなどだ。分かりやすくないと大衆は理解しないし、理解できない作品は買ってもらえない。
そのような歴史と情勢に鑑みて大胆にも私が予想するところでは、日本の現代美術界の若手でこれから欧米のディーラーに評価されそうなのは、加藤泉、小林孝亘、町田久美、日野之彦、谷口ナツコあたりではないだろうか。彼らはかなり有力なビッグスターの卵たちだ。現在の一押しと言える。
残念ながら、私の好きな画家は抽象表現主義系の画家たちで、沓澤貴子、亀山尚子、葛生裕子、久保理恵子、渡邊野子などだ。他に堀由樹子、立体の窪田美樹と先年亡くなった吉田哲也がいる。しかし彼らが絵画バブルの恩恵を受けることは難しいだろう。