仲居さんへの手慣れたチップのあげ方

 ある時赤坂の料亭で座談会をやることになり、準備のため早めに店へ行っていた。玄関を入ったところで連れを待っていると、昼食を済ませたらしい男女一組の客が帰るところだった。女はちょっと水っぽい感じだ。男が勘定を済ませているとき、女が男に近づき「あれ」と言った。すると男は財布を渡した。女は3千円抜き出して財布を返し、担当の仲居の側へ行って何も言わずにその着物の胸元にチップを差し入れた。仲居がいつも済みませんねと言った。仲居へチップを渡すのに、「あれ」と言ったほか男女の客がほとんど無言だったのが印象に残った。遊び慣れた連携プレーなのだ。ちょっとした芝居を見ているようだった。さすが赤坂。