山本弘の作品解説(4)「川」


 山本弘「川」油彩、F10号(53cm x 45.5cm)
 「川」と題されている。渓谷の急流だろうか。緑に囲まれた渓谷をジグザグに走る川。その川の輪郭をオレンジが縁取っていて、水までが緑に染まっている。力強いフォルムと、暗いが美しい色彩。山本は自賛するとおり色彩に優れた画家だ。左下の「弘」のサインが緑の補色の赤で、大したセンスだ。ギャラリー汲美のオーナーがこの絵はベートーヴェンだと評した。重量級だということだろう。傑作の一つだと思う。
 1976年9月の飯田市勤労福祉センターでの個展で発表。個人蔵。1976年から1978年までの3年間に4回の個展を行い、おそらく200点の作品を発表している。アル中に苦しみながらの、この旺盛な制作欲は3年後の死を予感していたのだろうか。