日劇ミュージックホールの思い出

 イタリアの映画監督ヤコペッティの「世界残酷物語」は大ヒットした映画だった。それで続編の「世界女族物語」が作られた。画家のクラインがヌードモデルの体にに青い絵の具を塗り、キャンバスに押し付けて作品を作ったり、パリのムーラン・ルージュのレビューを紹介したのが印象に残っている。二十歳前後の青年には特にこのレビューはとても官能的なものだった。それに近い世界が有楽町のマリオンの前身の日劇最上階にあった日劇ミュージックホールだった。踊り子たちは上半身裸でエロティックな踊りを見せてくれた。外人客が多かった。彼らは夫婦同伴で来ていた。日本人客はほとんど男たちだけだった。
 そこに足を運んだのは、現在の黒テントの演出家佐藤信が、日劇ミュージックホールのレビューを演出したからだった。カミさんを連れて行った。カミさんも喜んでいた。何しろダンサーたちがきれいなのだ。
 それから何度か通った。何年かして、日劇のビルと朝日新聞本社ビルが取り壊しになり、新しくマリオンが建設された。日劇ミュージックホールは解散してダンサーたちもちりぢりになってしまった。