題名の分からない本

 題名が分からなくてもどかしい思いをした本が2冊ある。1冊は小学生のとき学校図書館で借りて読んだ本で、子供向けの外国の小説だった。最後のシーンだけ覚えていて、失恋した青年が海中にやっと頭を出している岩に座ってじっとしている。やがて潮が満ちてきて青年は座っている岩もろとも海中に没するという話だった。小学生にとって強く印象に残ったようだ。ところがこの小説のタイトルも作者も分からない。赤木かん子さんの「本の探偵」にも調べてもらったが分からなかった。しかし小説を書いていた友人の久保田活司に話したところ、彼も子供の頃読んだ記憶があるという。やはり題名までは覚えていなかったが。われわれは別々の小学校に通っていた。つまり特別に珍しい本というのではないのではないか。

 もう一つは、単行本なのか雑誌に発表されただけなのか分からないが、エッセイみたいだった。ちょうど40年前、日本育英会の奨学生の試験を受けた。その試験問題がおもしろかった。せいぜい数十行の文章だったが、「地球」と「人類」の対話という体裁で、論争が行われていた。その論文の全文が読みたいと思って、もう40年が過ぎてしまった。

 誰かご存じの方がおられたら教えてほしい。