台東区立図書館旧館

 東京都台東区立図書館はもう10年くらい前に移転新築されていまでは本当に立派な施設になったけれど、もう無くなった旧館はちょっと面白かった。
 どこの区でも図書館はたいてい大きな中央館があり、区内各地に小さな分館がある。新しくなった台東区立図書館の中央館は西浅草に建てられた生涯学習センターのなかにあるが、旧館の中央館は鳥越神社裏手の方の三筋にあった。たしか3階建ての古い建物で受付が3階にあった。
 ここは本来閉架式の図書館であったようで、それをいつ頃からか開架式に変更していたようだ。「〜ようだ」と書いたが、これらはすべて私の推測だ。閉架式の図書館は国会図書館に見られるように、(昔は)カードで検索して希望する書名を記入した用紙を図書館員に渡すと利用者が入れない奥の書庫から希望する書籍を出してきてくれるもの。開架式は蔵書がオープンになっていて利用者が自由に出してみられる形式だ。今はたいていの公立図書館がこうなっているのではないか。
 で、昔の台東区立図書館の中央館、開架式を採用していたが、書庫がすごかった。まず受付が3階にある。書庫はせまい入口から入るが、3階、2階、1階と各階が書庫になっており、やはり狭くて急な階段を上り下りする。書庫の書棚と書棚の空間も狭く、一人がやっと通れるくらい。隅から隅までびっしりと書棚が設置されている。とにかく見通しが極端に悪い。本を探しているとき、ふいに書棚の角から人が現れたりしてびっくりする。まあ、私より相手の方が驚いているだろうけれど。
 つまり利用者が入って本を探すことなど全く前提にしてないのがよく分かった。当初閉架式として設計し、人件費などの予算か何かの都合で開架式に変更したのだろうと推理した次第。
 もちろん使いづらかったけれど、今になって振り返ればあれもなかなか面白い体験だった。