「浴槽で発見された日記」

 橋村奉臣さんの1000年後の世界を想定した写真集「HASHIGRAPHY」を見て、昔読んだスタニスワフ・レムの「浴槽で発見された日記」(集英社)を思い出した。とうに手放してしまったので、ネットで検索すると古書で8,000円もする。しかたないので図書館から借りる。
 もう26年前1980年の発行だ。原著は1961年。
 時は32世紀(あるいは37世紀)、過去に天王星の衛星から持ち帰ったハルチウス剤が地球の紙をことごとく分解してしまった。そのため、古い時代の石に刻まれた記録は残っているが、紙に記録されたものはすべて消え去って、歴史が分からなくなっている。
 一人の予知士(考古学者)がロックド山脈の麓のハアル=ヴァルド・ピークの地下に埋もれていた第3次ペンタゴンを発見し、その廃墟の浴槽から1冊の日記を発見する。
 アムメル=カではカプ=エ=タアル神崇拝が当時の支配的な信仰の一つになっていた。一般にこの神のことを全能の神ダ=ルラと呼んでいた。
 ここまでがわずか14ページの「序」で、以下日記の内容が紹介される。
 日記は外部世界から完全に閉ざされたペンタゴンの内部での、外部からのスパイと反スパイ、二重スパイ、三重スパイたちのスラップスティックなドラマが綴られる。
 日記本文の意味がよく分からない。ただ序に描かれた未来がユニークで印象に残ったSFだった。
 もちろん、アムメル=カはアメリカ、カプ=エ=タアル神は資本主義、全能の神ダ=ルラはドルだ。