針生一郎先生

 今から13年ほど前、針生一郎先生を案内して山本弘未亡人宅を訪ねた。
 400点ほど残っていた山本の油彩を1点1点ていねいに見ながら、時々「これは松本俊介よりいい」「これは香月泰男よりいい」と言われた。

 数年前セゾンアートプログラム主催の講演会で針生先生の講演を聞いた。戦後、新聞や雑誌で松本俊介や香月泰男、麻生三郎の絵を取り上げていたら、岡本太郎が何であんな連中を取り上げるのだと言った、岡本は、本当はあんな連中でなく俺のことを取り上げろと言いたかったのだ。しかし、私はこの3人が戦後の美術で最もいいと思っていたから取り上げたのですと話された。

 とてもとても嬉しかった。