偉大な画家は下手な画家

mmpolo2006-11-17




 3月14日の日記「小磯良平と山口長男」(id:mmpolo:20060314)にも書いたが、抽象の画家山口長男は絵が下手だった。
 宇佐美圭司によれば、アメリカの抽象表現主義の大家バーネット・ニューマンも初期のドローイングは下手だったと言う(目黒区美術館の講演から)。「ニューマンには幸か不幸かそのカラーフィールドと垂直線の前史に、貧弱なわずかの水彩画しかない」(宇佐美圭司「20世紀美術」岩波新書)。
 これも宇佐美によれば、日本では抽象表現主義というとポロックマーク・ロスコを思い浮かべる人が多いが、アメリカでは圧倒的にニューマンが評価されているという。ニューマンの作品というと、縦2.5m、横5mの巨大なキャンバスが赤一色で塗りつぶされており、そこに不規則な5本の垂直線が描かれている。
 テレビを見ていたら、版画の刷師だか彫師だかがインタビューに答えていて、フランク・ステラに版画を描かせたのは俺だと言っていた。版画の下絵を描けと言うとステラが自分は絵が描けないと言うので、油性マーカーで描けば俺が版画にしてやると言って描かせたのだという。
 ステラは戦後アメリカのミニマリズム絵画の巨匠だ。佐倉の川村美術館のステラのコレクションは世界で最も充実したものだという。そのステラが自分は絵が描けないと言ったという。


 偉大な画家たちが実は下手な絵描きだったということ。ただ私は山口を極めて高く評価するが、ニューマンもステラも評価することができない。


 (写真はステラの版画)