作家永沢光雄が11月1日死去した。肝障害で47歳だった。著書は「AV女優」「声をなくして」など。新聞の訃報欄にそうあった。
「AV女優」(文春文庫)は高橋源一郎がほめていたので読んだ。アダルトビデオに出演している女の子42人へのインタビュー集だ。彼女たちに対する永沢の姿勢はやさしく気持ちがいい。ほとんどの女の子は家庭が不幸だった。
しかし、一番良かったのが文庫版のあとがきだった。今村淳という文藝春秋の編集者のことを書いている。
単行本の「AV女優」がビレッジセンター出版局から出てすぐ永沢は今村淳から速達の葉書を受け取る。著書をほめ一度お目にかかりたいとあった。3日後新宿2丁目の居酒屋で会い朝まで飲んだ。文春の文庫部にいるという。それから1カ月か2カ月に一度の割合で誘われ銀座や新橋の高そうな店で飲んだ。
その内ある出版社から「AV女優」を文庫にしたいという話があった。内諾した後念のため今村に話すと、文春で出したいと言いませんでしたか、その話断ってください、ウチで出しますから。
今村は会えば永沢に「小説を書きなさい」と繰り返し言ったという。
やがて今村は背中の痛みを訴えるようになり検査入院した。そして45歳で亡くなった。
これらのことを綴る永沢の文章はすばらしい。二人の友情が掛け値なく伝わってくる。
私はこのあとがきを読んでようやく永沢の文章力がすぐれていることに気付いた。だが編集者今村淳はインタビュー集を読んですでにそれを確信していたのだ。
今回これを書くためにあとがきを読み返した。洟をかんでメガネをさがしたが見当たらなかった。外してなどいなかった。
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