芝居

新国立劇場第6期生修了公演『インナーヴォイス』を見る

新国立劇場で演劇研修所第6期生の修了公演『インナーヴォイス』を見る。作:エドゥアルド・デ・フィリッポ、演出が研修所所長の栗山民也。なかなか面白く楽しめた。私はバルコニー席で2,500円だったが、平土間でも3,000円という安さだ。 演劇研修所長の栗山…

鴎座の『洗い清められ』を見て

鴎座フリンジ企画の芝居『洗い清められ』を渋谷のスペースEDGEで見る。イギリスのサラ・ケイン作。サラは1971年生まれ、28歳のときうつ病で自死している。演出は川口智子、2010年に同じ作品をリーディング形式で『クレンズド』として上演し、2011年は『浄化…

黒テント公演『青べか物語』を見る

劇団黒テント第73回公演『青べか物語』を神楽坂のイワト劇場で見る。原作が山本周五郎、上演台本と演出が鄭義信、出演が黒テントの役者たちだ。 芝居は群衆劇の構成をとっている。主人公の蒸気河岸の先生役は次々と役者が変わる。手にスケッチブックを持って…

松屋銀座の「ルパン三世展」を見る〜黒テントのこと〜ル・カレ

松屋銀座の「ルパン三世展」を見た(8月22日まで)。「ルパン三世」はモンキー・パンチによって1967年『漫画アクション』に連載マンガとして始まった。その後1971年にアニメ化される。本展ではマンガの原画、アニメの設定画、セル画、フィギュア、秘蔵資料…

座・高円寺の劇場創造アカデミー1期生修了上演を見て

東京都杉並区高円寺に「座・高円寺」という劇場がある。これは杉並区立の複合施設で、正式名称は杉並区立杉並芸術会館、2009年に開館した。建物の設計は伊東豊雄、芸術監督は佐藤信だ。施設の開館とともに若い演劇人を育てる「劇場創造アカデミー」を立ちあ…

新国立劇場で「美しい日々」を見る

新国立劇場演劇研修所の第4期研修生の修了公演「美しい日々」を同劇場の小劇場で見た。作が松田正隆、演出が宮田慶子だ。第4期研修生の公演は先月リサイタルホールで「マニラ瑞穂記」を見て圧倒された。それで今回楽しみにして来た。役者たちはとても良か…

「マニラ瑞穂記」−−新国立劇場演劇研修所第4期生試演会を見る

秋元松代・作、栗山民也・演出「マニラ瑞穂記」を新国立劇場リサイタルホールAで見る。同劇場の演劇研修所第4期生による試演会で、申込み順の無料という公演。これが大当たりだった。とても研修生が演じているとは思えない優れた舞台だった。演出もすばらし…

井上ひさし作「ムサシ」を映画で見て

昨年亡くなった井上ひさしの最後から2番目の芝居「ムサシ」の評判がとても良かった。でも芝居は料金が高いから見に行かれなかった。非常に残念に思いながら。それが知らない内に映画になっていた。舞台をそのまま撮影しているのだ。演出はもちろん蜷川幸雄…

斎藤憐の音楽劇「アメリカン・ラプソディ」

斎藤憐・作の音楽劇「アメリカン・ラプソディ」を座・高円寺という劇場で見た。演出が佐藤信、出演が高橋長英と関谷春子、ガーシュイン役で終始ピアノを弾いていたのがジャズピアニストの佐藤允彦だった。つまりこの芝居はガーシュインを描いたもの。ガーシ…

チェーホフの「かもめ」

先日あった読書会でチェーホフの「かもめ」がテキストとして使われたが、おおかたの感想はつまらないとか読みづらいというものだった。最近池袋の劇場で「かもめ」を見たという人が芝居は面白かったと言われた。 私も高校生の時、友人に勧められて清水邦夫の…

黒テントの「世界の同時代リーディングシアター2010」を見て

劇団黒テントの「世界の同時代リーディングシアター2010」と銘打ったシリーズで、「殺戮の神」と「ザ・ワンダフル・ワールド・オヴ・ディソシア」(以下「ディソシア」)の2本立てを見た。7月23日に神楽坂のシアターイワトで。 「殺戮の神」はフランスのヤ…

こんにゃく座の「オペラ ネズミの涙」

新百合ヶ丘にある川崎市麻生市民会館ホールで行われたこんにゃく座の「オペラ ネズミの涙」を見た。台本・演出があの「焼肉ドラゴン」の鄭義信だ。作曲は荻京子。こんにゃく座は娘が幼稚園の頃「セロ弾きのゴーシュ」を見たことがある。テーブルのような大き…

好きな役者2人

好きな役者といえばまず中村美代子。俳優座の女優で1924年生まれ。木冬社の芝居で何度か見たが、脇でごちゃごちゃ言っているおばあちゃんのような役が多い。坂本竜馬を描いた清水邦夫の「弟よ」とか、「冬の馬」「わが夢に見た青春の友」・・・。 3年前に見…

人は何を見に行くのか

映画や芝居に人は何を見に行くのだろう。以前木冬社の芝居で平幹二朗が主演していた頃、劇場はいつも満員だった。木冬社の主宰者である脚本の清水邦夫は長い台詞を書く。平幹二朗や木冬社の主演女優松本典子が舞台で朗々と語る長い台詞を聞くことは本当に快…

渡辺保によるスタニスラフスキー著「俳優の仕事」の書評

渡辺保がスタニスラフスキー著「俳優の仕事ーー俳優教育システム」(未来社)の書評を書いている(毎日新聞2008.11.16)。 この本には四つの側面がある。 第一に、俳優教育のテキスト。(中略) 第二に、演劇の入門書として。(中略) 第三に、身体論あるい…

玄人の言葉

先日、ひょっとこ乱舞という劇団の芝居を見た。初めて見る劇団だが、「タダ見でゴー」という無料チケットをもらったので、吉祥寺シアターへ行って「プラスチックレモン」という芝居を見てきた。作・演出:広田淳一。 その感想をmixiの日記に書いた。 これが…

女性の成熟を求めない日本の文化

昨日5日からデヴィッド・ルヴォーの演出でイプセンの「人形の家」が始まったらしい。宮崎りえと堤真一主演、渋谷のシアターコクーンで。S席9,000円、A席7,000円、うむ高い。デヴィッド・ルヴォーは長くT.P.T.(シアター・プロジェクト・東京)の芸術監督を…

鴎座の「ダントンの死について」

神楽坂のシアター・イワトで鴎座の「ダントンの死について」という芝居を見た。ゲオルク・ビューヒナーの台本を大幅に刈り込んで再構成しているらしい。台本・演出・美術が黒テントの佐藤信だ。鴎座は佐藤信の個人劇団なのだ。 ダントンはロベスピエールとと…

新国立劇場演劇研修所研修生の高いレベル

昨日紹介した井上ひさしの「リトル・ボーイ、ビッグ・タイフーン」に出演したのが新国立劇場演劇研修所第2期研修生14名、かれらは初めての国立の俳優養成所の研修生たちなのだ。 この芝居を演出した栗山民也「演出家の仕事」(岩波新書)には次のように紹介…

井上ひさしの朗読劇「リトル・ボーイ、ビッグ・タイフーン」

井上ひさしの朗読劇「リトル・ボーイ、ビッグ・タイフーン」を見た。日本ペンクラブ主宰の「災害と文化。」というフォーラムがあり、その一環として新宿の全労済ホール/スペースゼロで2月22日と24日の2回だけ上演された。演出が栗山民也、出演が新国立劇…

栗山民也「演出家の仕事」を読む

栗山民也「演出家の仕事」(岩波新書)が面白かった。著者は最近まで新国立劇場演劇部門芸術監督を務めていた人。最近もチェーホフを描いた井上ひさしの新作「ロマンス」を演出した。 芝居の演出の現場の具体例が紹介されていて、演出ってこんなに面白く、し…

「ひょっこりひょうたん島」の世界

「ひょっこりひょうたん島」はNHKの人形劇で、最初1964年に放映された。作者は井上ひさしと山元護久、もう、とてつもなく面白かった。この年高校へ入学した私は、早稲田大学を卒業して赴任してきた世界史の教師小宮山先生から、面白い番組が始まったから見な…

人は何を見に行くのか

映画や芝居に人は何を見に行くのだろう。以前木冬社の公演には平幹二朗が客演していた。客席はいつも満員だった。木冬社の主宰者兼脚本家の清水邦夫の芝居は長い台詞が多い。木冬社の女優松本典子や平幹二朗の舞台での長いモノローグを聞くことは、まるでオ…

ブレヒト「三文オペラ」

黒テント(旧称・演劇センター68/71)が好きでもう35年も見続けている。正確には好きなのは脚本家兼演出家の佐藤信なのだ。以前は座長だったがいまはどういう立場なのだろう。佐藤信が演出すれば日劇ミュージックホールへも足を運んだし、オペラも見た。新劇…

田中未知「寺山修司と生きて」(新書館)を読んで

田中未知「寺山修司と生きて」(新書館)を読んだ。数多ある寺山修司論の中でもこれは白眉だ。私は数冊の寺山修司論を読んでいるに過ぎないが、仮にこれ1冊しか読んでなくてもそのことは断言できる。 著者の田中未知は20歳のとき寺山に会った。その時寺山は…

天井桟敷入団の手びき

私のところに天井桟敷の入団の手びきがある。おそらく40年ほど前、1967年から1968年頃作られたものだ。当時友人が、お前ここに入団しないかとと送ってくれたものだろう。表紙に「天井桟敷 A LABORATORY OF PLAY」とタイトルが印刷されている。表紙をめくった…

役者の生活は大変だ

創立40年近いという老舗の小劇団があり、そこの役者が公開しているネットの日記に、夜の公演前にバイトに行ったと書かれていた。その公演で彼女は結構大事な役をやっている。にも関わらず、その日の公演の前にバイトをしてるんだ! そういえば、同じ劇団のも…

黙示体、花輪あや、懐かしい

もう30年ほど前になる。黙示体というアングラ劇団があって、花輪あやさんが脚本家兼主演女優だった。きれいな人だった。いつも阿佐ヶ谷の小さなスペース「アルス・ノーヴァ」で公演をしていた。公演後客席に一升瓶を持ってきて観客たちと始発まで飲み明かす…

劇作家 清水邦夫の秘密

好きな劇作家が三人いる。黒テントの佐藤信と木冬社の清水邦夫、それにこまつ座の井上ひさしだ。その清水邦夫が自分の秘密を明かしている。長い引用だが(清水邦夫ファンや研究者にとって)貴重な発言だ。 エッセイ「わが"バイブル"」より ぼくは劇作をはじ…

緑魔子はきれいだった。

若い頃の緑魔子はきれいだった。モノクロのヌードの写真集「悪の華」が出版されて、欲しかったけれど高かった。妖しいエロティシズムを体現している女優だった。アイドルなんていう軽い存在ではなかった。 初めて生の姿を見たのは佐藤信率いる黒テントの芝居…