歴史

司馬遼太郎『この国のかたち 二』を読む

司馬遼太郎『この国のかたち 二』(文春文庫)を読む。『文藝春秋』の巻頭言として連載したものを24回分まとめている。単行本は30年前に出たものだが内容は古びていない。 この巻頭言は時事的なものではなく、日本の歴史、文化を毎回原稿用紙10枚ほどにまと…

「空有」という思想

東京墨田区立花一丁目1番地に吾嬬神社がある。祭神は弟橘姫、ヤマトタケルの妃だ。ヤマトタケルが浦賀水道を船で横断するとき嵐で船が難破しそうになった。弟橘姫が海に身を投げて海神の怒りを鎮め無事ヤマトタケルが岸に着いたという。その後流れ着いた弟橘…

高松プロダクション・吾嬬撮影所跡

墨田区曳舟駅周辺を散歩していたら十間橋通りの一角に小さなプレートが目についた。「高松プロダクション・吾嬬撮影所跡」とある。そのプレートの文章を引く。 高松プロダクション・吾嬬撮影所跡 所在 墨田区京島三丁目62番 日本映画の製作は、日活、松竹な…

岩波新書編集部編『日本の近現代史をどう見るか』を読む

岩波新書編集部編『日本の近現代史をどう見るか』(岩波新書)を読む。「シリーズ日本近現代史」の第10巻、ちょうど10年前に発行されている。当時一度読んでいるが今回改めて読み直した。 この「シリーズ日本近現代史」は9人の研究者らが1巻から9巻までを分…

江戸川区平井の天祖神社に参拝する

旧中川に沿って散歩していると、小ぶりだが趣のある神社があった。天祖神社だ。神社は小さいが建物は奥に深くなかなか優雅な建築だ。 江戸川区の教育委員会が設置したプレートが建てられている。それによると、 天祖神社 旧平井村の鎮守で1874年(明治7)に…

大沢梅次郎という人

JR総武線亀戸駅から明治通りを北上すると10分ほどで北十間川にかかる福神橋を渡る。右手すぐには関東でも最も古い神社だと私が確証する吾嬬神社があり、反対の左手に公園にしては小ぶりな場所があり、その奥に銅像が立っている。銅像の主は大沢梅次郎と名前…

二代目歌川豊国の墓

東京亀戸に光明寺という寺がある。そこに二代目豊国の墓があるというので拝見してきた。二代目豊国は初代歌川豊国に弟子入りし、師の没後二代目を名乗ったが、すでに兄弟子の国貞が二代目豊国を名乗っており、それがためか浮世絵師を廃業しているらしい。国…

葛飾の熊野神社へ詣でる

昨日「立石」について書いたので、それに関連して同じ葛飾区立石にある熊野神社を詣でた。神社のHPを見て京成電鉄の青砥駅で降りてやはり中川に沿って行ったが、着いて見れば「立石」の古跡からわずか300mほどしか離れていなかった。 神社の両脇に樹齢300年…

葛飾区の立石様に行く

東京葛飾区に「立石様」という古跡がある。初めてそこに行ってみた。京成立石駅で下車し、本奥戸橋の畔を中川堤に沿って川上へ進む。中川はたっぷりした流れの大きな川だ。古い川筋が残っていて川は大きく蛇行している。 しばらく川に沿って行くと左手に小さ…

長谷川修一『旧約聖書の謎』を読む

長谷川修一『旧約聖書の謎』(中公新書)を読む。副題が「隠されたメッセージ」というもので、旧約聖書の各エピソードの史実性を探りながら、その意味するものを読み解いている。これがなかなか面白かった。 取り上げられているのは7つの物語。ノアの方舟と…

司馬遼太郎『この国のかたち一』を読む

久しぶり、20数年ぶりに司馬遼太郎『この国のかたち一』(文春文庫)を読む。1986年から1987年の2年間『文藝春秋』に連載した巻頭言をまとめたもの。結局この連載は10年以上続いたので評判が良かったのだろう。今回読み直してみて改めて司馬の魅力に取りつか…

新珍味のタ―ローメンを食べる

池袋の中華料理店新珍味でタ―ローメンを食べる。タ―ローメンについては店頭の看板に説明がある。 同店が65年の長きに渡りその味を守り続けてきたという、名物《タ―ローメン》は酸味と辛みとニンニクの香りがクセになる、餡かけラーメンです。ラーメンの上に…

吾嬬神社へ初詣

元旦は近所の吾嬬神社へ初詣に行ってきた。吾嬬神社は東京都墨田区立花に位置している。早朝7時ころ行ったが。参拝客は私のほかたった2人だった。実は吾嬬神社はきわめて古い神社なのだ。最寄りの駅は東武亀戸線東あずま駅だし、東吾嬬小学校や橘吾嬬の森小…

竹森神社の由来

東京都中央区小伝馬町に竹森神社という小さな神社がある。神社の由来が書かれたものを写す。 小伝馬町三丁目の守護神である竹森神社は、江戸時代よりこの付近に竹やぶが多く、竹につながる町、竹職人の町ともいわれ、竹藪にちなんで竹森神社としたと言われて…

小林信彦『和菓子屋の息子』を読む

小林信彦『和菓子屋の息子』(新潮社)を読む。副題が「ある自伝的試み」とある。小林の生家は京保年間創業の老舗の和菓子屋だった。店舗兼工場兼住宅は両国にあった。地名が変わって今は東日本橋という。現在の両国は昔は東両国と言った。戦前東京の盛り場…

小林信彦『アメリカと戦いながら日本映画を観た』を読む

小林信彦『アメリカと戦いながら日本映画を観た』(朝日文庫)を読む。昭和7年生まれの著者が太平洋戦争に突入した頃から終戦のころまでどんな日本映画を観てきたかを語りながら、そのことで当時の世相を少年の眼で描いている。とても興味深い社会史になって…

アメリカインディアン酋長シアトルの美しいメッセージ

ル・クレジオの『歌の祭り』(岩波書店)にアメリカインディアンの酋長シアトルの美しい言葉が紹介されている。以前もここに紹介したが、あまりにも素晴らしいので再掲する。 1855年、諸部族連合会議において、先住民の土地を買い上げようというアメリカ政府…

伊藤俊樹『モンゴルvs.西欧vs.イスラム』を読む

伊藤俊樹『モンゴルvs.西欧vs.イスラム』(講談社選書メチエ)を読む。これがすさまじい内容だった。もう15年前に発行されて評判だった本らしいが、うかつにも知らなかった。すさまじい内容というのは、13世紀のモンゴルのイスラムや西洋への侵略を描いてい…

山内昌之・細谷雄一 編著『日本近現代史講義』を読む

山内昌之・細谷雄一 編著『日本近現代史講義』(中公新書)を読む。昨日読み終えて今朝の新聞を見たら半五段の大きな広告が載っていた(朝日新聞)。新書1冊だけの広告としては異例の扱いだ。“これぞ最新、最前線の「令和の日本史」!”とある。 14人の著者が…

井上ひさし『二つの憲法』を読む

井上ひさし『二つの憲法』(岩波ブックレット)を読む。二つの憲法とは、明治22年に発布された大日本帝国憲法と、昭和21年に公布された日本国憲法だ。井上はこの二つの憲法を比べている。 大日本帝国憲法について、井上が解説する。天皇は帝国議会を開会した…

半藤一利『「昭和天皇実録」を読む』を読む

半藤一利『「昭和天皇実録」にみる開戦と終戦』(岩波ブックレット)を読む。「昭和天皇実録」を読み込んで、開戦と終戦に関する昭和天皇の関与を分析している。 軍部は日中戦争の泥沼化を打開しようと南部仏印に進駐することを企てる。天皇が各国に影響を及…

岡村秀典『鏡が語る古代史』を読む

岡村秀典『鏡が語る古代史』(岩波新書)を読む。中国の前漢の頃から後漢、三国時代~晋の建国頃までの古代の銅鏡の精密な歴史を辿っている。それは驚くほど詳細を極め、2000年以上もの過去の鏡の製作者たちとその流れを追っている。 いままで古代の銅鏡の歴…

亀戸の石井神社が朝日新聞で紹介されている

朝日新聞のコラム「マダニャイとことこ散歩旅」で東京亀戸の石井神社が取り上げられている(2019年7月11日夕刊)。 神社の奉賛会「おしゃもじ会」の・・会長は「地元では、おしゃもじ様と呼ばれているんです」。神社の歴史は古く、平安時代の811年に弘法大…

松濤の廃墟

渋谷の東急百貨店本店の横の道をまっすぐ首都高に向かって登っていく坂道。松濤1丁目あたりの道に面して廃墟があった。これを撮影したのはもう15年以上前だったが、現在は瀟洒なビルが建っている。 屋敷だったところの右側に立派な門らしい石柱が立っている…

吾嬬神社への初詣

元旦は近所の吾嬬神社へ初詣に行ってきた。吾嬬神社は東京都墨田区立花に位置している。早朝7時ころ行ったが。参拝客は私のほかたった1人だった。実は吾嬬神社はきわめて古い神社なのだ。最寄りの駅は東武亀戸線東あずま駅だし、東吾嬬小学校や橘吾嬬の森小…

地下鉄丸ノ内線四谷三丁目駅近くのお岩水かけ観音について

小林紀晴『写真で愉しむ 東京「水流」地形散歩』(集英社新書)を読むと、四谷三丁目のお岩水かけ観音に触れている。 ……四谷三丁目の交差点近くにあるスーパーマーケットの丸正食品総本店前のお岩水かけ観音。かなり目を引く存在なのだが、あの四谷怪談と深…

小林紀晴『写真で愉しむ 東京「水流」地形散歩』を読む

小林紀晴『写真で愉しむ 東京「水流」地形散歩』(集英社新書)を読む。写真家である小林が大型カメラを担いで、東京の河川を歩き回った記録だ。小林は写真家でありながら『メモワール』とか『ニッポンの奇祭』など興味深いエッセイを書いている。 本書はち…

新宿の小浜藩邸跡

東京新宿の矢来町に小さな矢来公園がある。そこに小ぶりな石碑が立っていて、その下に公園の由緒が書かれている。 小浜藩邸跡 若狭国(福井県)小浜藩主の酒井忠勝が、寛永五年(1628)徳川家光からこの地を拝領して下屋敷としてもので、屋敷の周囲に竹矢来…

筒井清忠 編『明治史講義【人物篇】』を読む

筒井清忠 編『明治史講義【人物篇】』(ちくま新書)を読む。明治史における重要な人物22人を取り上げ、それを20人の研究者が分担して書いている。1項目が15〜20ページと短い。それでも全体は400ページほどある。短いとはいえ、大項目主義の事典と考えればい…

瀬川拓郎『縄文の思想』を読む

瀬川拓郎『縄文の思想』(講談社現代新書)を読む。「縄文の思想」と題されている。瀬川は「はじめに」で、本書は「考古学と神話から具体的な資料にもとづいて縄文の思想をあきらかにします」と書いている。縄文の思想? って思ったが、読み終わって、それに…