映画

モラヴィアとゴダールの「軽蔑」

アルベルト・モラヴィアの「軽蔑」を40年ぶりに読み直した。この作品はモラヴィアのなかで最も完成度が高いとずっと思っていた。しかし今回読み直して、細密な心理描写がむしろ鬱陶しいくらいだった。小説は一人称で書かれていて、思考の描写が地を這うよう…

内田けんじ監督作品「アフタースクール」

映画や芝居評でいつも参考にしているぼのぼのさんのブログBadlands(http://bonobono.cocolog-nifty.com/)で以前内田けんじ監督の「運命じゃない人」が絶賛されており、それではとツタヤでDVDを借りて見たら本当に面白かった。ところがストーリーも複雑では…

スウェーデンの城

昔見た映画「スウェーデンの城」をもう一度見たいと思ってAmazonのDVDを検索した。なかった。「悲しみよこんにちは」のフランソワーズ・サガンの戯曲が原作で、ブリジット・バルドーやカトリーヌ・ドヌーヴ、ジェーン・フォンダなど錚々たる美女たちと仲良く…

省略の技法

金井美恵子「小説論」(朝日文庫)には「映画・小説・批評ーー表象の記憶をめぐって」と題された城殿智行によるインタビューが載っている。そこから映画と小説の省略の技法が語られているところを紹介する。 城殿智行 書き方のお話も少しうかがいたいのです…

去年マリエンバードで

先日紹介した「夏の名残の薔薇」には映画「去年マリエンバードで」のシナリオが引用されている。これはアラン・ロブ=グリエ脚本、アラン・レネ監督のフランス映画だ。ロブ=グリエは2人称で書かれた小説「嫉妬」や「消しゴム」「覗くひと」などを書いたヌ…

「友よ映画よ、わがヌーヴェル・ヴァーグ誌」を読んで

山田宏一「増補 友よ映画よ、わがヌーヴェル・ヴァーグ誌」(平凡社ライブラリー)が楽しい。500ページもあるのに一気に読んでしまった。山田宏一はフランスに留学し「カイエ・デュ・シネマ」(映画の手帳)の同人となり、ヌーヴェル・ヴァーグの監督たちと…

四方田犬彦「大島渚と日本」の連載が始まった

四方田犬彦「大島渚と日本」の連載が筑摩書房のPR誌「ちくま」2月号から始まった。これは著者によれば「貴種と流転 中上健次」「白土三平論」と並んで、日本論三部作を構成するという。 題名の由来に、大島渚の作品名に「日本」を冠したものが少なくないと…

マノエル・ド・オリヴェイラ監督「夜顔」

マノエル・ド・オリヴェイラ監督「夜顔」を見る。これはルイス・ブニュエル監督「昼顔」の38年後の後日談といった設定。ブニュエルへのオマージュと言える。 「昼顔」は1966年に製作された映画でカトリーヌ・ドヌーヴが主演でヒットした。美しい新婚の人妻セ…

チェン・カイコー「私の紅衛兵時代」の読書会に参加した

読書会なるものに参加した。思うに50年ぶりだ。50年前は村の社会教育主事が青年団員を集めて「空想から科学へ」の読書会を企画したのに参加したことがある。その社会教育主事は「赤い」ということで左遷され、村の小中学校の図書館司書にされた。その後中央…

人は何を見に行くのか

映画や芝居に人は何を見に行くのだろう。以前木冬社の公演には平幹二朗が客演していた。客席はいつも満員だった。木冬社の主宰者兼脚本家の清水邦夫の芝居は長い台詞が多い。木冬社の女優松本典子や平幹二朗の舞台での長いモノローグを聞くことは、まるでオ…

「河童のクゥと夏休み」は21世紀日本映画のベストワン! という評価

演劇評、映画評で最も信頼するぼのぼのさんのブログ「Badlands」に「河童のクゥと夏休み」が紹介された。21世紀に入って作られた日本映画のベストワンだという。ここまで言われたら見ないわけにはいかない。 原恵一が脚本・監督を手がけたアニメーション『河…

映画カメラマンの不思議な常識

映画監督の今村昌平と仕事をしたカメラマンSさんの話を聞いたことがある。彼は「神々の深き欲望」でカメラマンをした。何人ものカメラマンがいて、何番目の階級かは聞き漏らした。日本では末端の助手から始まってだんだん出世していく。最初は三脚運びの役だ…

映画「キサラギ」が面白かった

映画「キサラギ」を見た。普段あまり映画を見ないので偉そうなことは言えないが、5段階評価で☆☆☆☆。「映画・演劇・音楽レビューBadlands」というサイトは、その演劇評が玄人裸足として私が最も信頼しているものだが、そこでこの映画を今年の日本映画の1、…

シャロン・ロックハートの「GOSHOGAOKA」

アメリカ在住のシャロン・ロックハートという女性アーチストがいる。1996年に茨城県守谷市を拠点とするアーティスト・イン・レジデンス・プログラム「アーカスプロジェクト」に参加したシャロン・ロックハートは、守谷市の中学生のバスケットボールチームの…

三島由紀夫の演出術

堂本正樹「回想 回転扉の三島由紀夫」(文春新書)がおもしろかった。著者は劇作家・演出家で16歳のときに8歳年上の三島由紀夫と出会い、三島が亡くなるまで付き合った。 三島がは小説でも成功していたが、芝居も書いていて評判がよかった。「近代能楽集」…

ハンプティー・ダンプティーを知っているか?

昨年「オール・ザ・キングスメン」(スティーヴン・ザイリアン監督)という映画が公開された。これは1949年の同名の映画(ロバート・ロッセン監督)のリメークとのこと。英語の題名が、All The King's Menという。原作はアメリカの作家ロバート・ベン・ウォ…

淀川長治と蓮實重彦の映画対談がおもしろかった!

現行の雑誌マリ・クレール以前に別のマリ・クレールがあった。中央公論社から発行されていた。男性読者の多い女性誌と言われていた。編集スタッフに安原顕がいた。当時の雑誌を2冊保管している。いわゆる永久保存版だ。 1冊は1990年7月号「映画特集」もう…

声が似ていると顔が似ている

若い頃の岡田茉莉子はきれいだった。彼女が主演した「秋津温泉」の監督を吉田喜重に依頼し、その後二人は結婚する。吉田が独立プロの現代映画社に移ってからの作品はすべて岡田茉莉子が主演した。「樹氷のよろめき」「炎と女」「女のみづうみ」等々。(「樹…

演出術

子供の頃「ルーシー・ショー」というテレビドラマがあって大好きだった。アメリカのテレビコメディで、ルシール・ボールという女優が主演していた。家庭劇みたいなたわいのないコメディだった。 大人になって再放送を見て驚いた。ルーシーが相方の女優と話を…

パトリシア・ゴッジ

高校3年の時に「かもめの城 Rupture」という映画を見て主演女優のパトリシア・ゴッジPatricia Gozziが好きになった。それは彼女が14歳の時撮られた映画だった。 後に東京の名画座で彼女が主演している評判の良い古い映画「シベールの日曜日」を見た。映画は…