映画

新藤兼人監督の映画『墨東綺譚』を見る

新藤兼人 脚本・監督『墨東綺譚』の映画をDVDで見る。1992年制作の作品で、主演が津川雅彦と墨田ユキだった。新藤は『『墨東綺譚』を読む』(岩波現代文庫)で、こう書いていた。 荷風の浅草物と称して書いた舞台脚本は調子の低い物でした。荷風の小説は構成…

立川談志の『談志映画噺』は優れた映画のガイドブックだ

先頃亡くなった立川談志の『談志映画噺』(朝日新書)を読む。とても優れた映画のガイドブックだ。談志が映画に対して深い愛情を抱いていたことがよく分かる。多数の映画評論家たちのガイドブックでなく、1人の主観に偏向したガイドブックという試みがここ…

アラン・ドロンへのオマージュ

毎日新聞2011年12月25日の「好きなもの」というコラムの筆者はシンガー・ソング・ライターの畠山美由紀だった。このコラムは各界の有名人が毎回好きなもの3点をあげ、その理由を書いている。畠山の好きなものは、1.脚注、2.遠野、3.アラン・ドロンだ…

「ゴダールと女たち」を読む

四方田犬彦「ゴダールと女たち」(講談社現代新書)を読む。読み始めてすぐ、私たちは幸福な本に出会うことができたと感じた。ゴダール論であり、そのゴダールの映画に主演した女優でゴダールと深く関係した5人を取り上げた女優論でもある。その5人は、ジ…

「大鹿村騒動記」を見て

映画「大鹿村騒動記」を見た。主演の原田芳雄が先日急死し、それが話題になったのかヒットしているという。だが派手な映画ではない。 大鹿村は長野県の南部に実在する山村だ。岩塩が採れ鹿が舐めに来るとかでこの名がある。日に何本かのバスが走っているくら…

竹中労「鞍馬天狗のおじさんは」が面白い

竹中労の「鞍馬天狗のおじさんは」(ちくま文庫)がとても面白い。副題が「聞書アラカン一代」で、戦前から戦後にかけて大ヒットした映画「鞍馬天狗」を演じた大スター嵐寛寿郎への聞書をまとめたものだ。アラカンはサイレント時代から戦後までチャンバラ映…

伝説の女優の伝記「原節子 あるがままに生きて」を読む

貴田庄が書いた伝記「原節子 あるがままに生きて」(朝日文庫)を読む。「伝説の女優」と言われた原節子のことを何も知らなかった。昨年渋谷のシネマヴェーラで岡田茉莉子特集を見たとき、小津安二郎の撮った「秋日和」に、初めて見るが何か存在感のある女優…

井上ひさし作「ムサシ」を映画で見て

昨年亡くなった井上ひさしの最後から2番目の芝居「ムサシ」の評判がとても良かった。でも芝居は料金が高いから見に行かれなかった。非常に残念に思いながら。それが知らない内に映画になっていた。舞台をそのまま撮影しているのだ。演出はもちろん蜷川幸雄…

四方田犬彦「『七人の侍』と現代」はお勧め

四方田犬彦「『七人の侍』と現代」(岩波新書)がすばらしい。四方田犬彦は明治学院大学で映画史を教えている。四方田にとって黒澤は偉大だが過去の映画監督だった。そう思っていたが、パレスチナとユーゴスラビアへ文化交流使として行ったとき、黒澤の映画…

小津安二郎の「秋日和」

岡田茉莉子の自伝「女優 岡田茉莉子」(文藝春秋)が出版されたのを記念して、ポレポレ東中野で岡田茉莉子特集が組まれている。先日そこで小津安二郎の「秋日和」を見た。劇場で小津を見たのは初めてだった。45年ほど前に何作かテレビで見ていた記憶がある。…

濡れ場の表現いろいろ

私は以前「ねじめ正一『荒地の恋』を読んで、また猫山のこと」(2007年11月19日)に、ねじめ正一が書いた晩年の北村太郎の伝記で、北村が若い恋人阿子と知り合い「北村は合羽橋で買った専用の小鍋で上手に親子丼を作った。二人で向かい合って食べ、それから…

『ティファニーで朝食を』の原作と映画

『ティファニーで朝食を』といえば、たいていの人がオードリー・ヘップバーンの映画を思い浮かべるだろう。小説『ティファニーで朝食を』の訳者村上春樹はそのあとがきでこう書いている。 映画は原作とはけっこう違った話にはなっているものの、なかなか小粋…

ソクーロフ「チェチェンへ/アレクサンドラの旅」

ソクーロフ監督作品「チェチェンへ/アレクサンドラの旅」を渋谷ユーロスペースで見る。撮影時点で80歳のロシアのソプラノ歌手ガリーナ・ヴィシネフスカヤが主演の戦争映画。といってもおばあさんがチェチェン駐屯のロシア軍の孫を訪ねる話。不便な貨車に兵…

「チェチェンへ アレクサンドラの旅」

朝日新聞12月12日夕刊に映画評論家の山根貞男が、昭和天皇をモデルにした「太陽」を撮ったアレクサンドル・ソクーロフの新作映画「チェチェンへ アレクサンドラの旅」を紹介している。 おばあちゃんが兵舎にいる孫を訪ねる。たったそれだけの話が、なぜこれ…

吉田喜重監督の作品を追いかけていた

ヴィスコンティが1972年に制作した映画「ルートヴィヒ」の完全版をシネマヴェーラ渋谷で見た。上映時間4時間の完全版、途中全くだれることがなく至福の時間を体験した。豊かな映画だった。 ヴィスコンティを見たのは昨年の「山猫」完全版に続いてやっと2本…

モラヴィアとゴダールの「軽蔑」

アルベルト・モラヴィアの「軽蔑」を40年ぶりに読み直した。この作品はモラヴィアのなかで最も完成度が高いとずっと思っていた。しかし今回読み直して、細密な心理描写がむしろ鬱陶しいくらいだった。小説は一人称で書かれていて、思考の描写が地を這うよう…

内田けんじ監督作品「アフタースクール」

映画や芝居評でいつも参考にしているぼのぼのさんのブログBadlands(http://bonobono.cocolog-nifty.com/)で以前内田けんじ監督の「運命じゃない人」が絶賛されており、それではとツタヤでDVDを借りて見たら本当に面白かった。ところがストーリーも複雑では…

スウェーデンの城

昔見た映画「スウェーデンの城」をもう一度見たいと思ってAmazonのDVDを検索した。なかった。「悲しみよこんにちは」のフランソワーズ・サガンの戯曲が原作で、ブリジット・バルドーやカトリーヌ・ドヌーヴ、ジェーン・フォンダなど錚々たる美女たちと仲良く…

省略の技法

金井美恵子「小説論」(朝日文庫)には「映画・小説・批評ーー表象の記憶をめぐって」と題された城殿智行によるインタビューが載っている。そこから映画と小説の省略の技法が語られているところを紹介する。 城殿智行 書き方のお話も少しうかがいたいのです…

去年マリエンバードで

先日紹介した「夏の名残の薔薇」には映画「去年マリエンバードで」のシナリオが引用されている。これはアラン・ロブ=グリエ脚本、アラン・レネ監督のフランス映画だ。ロブ=グリエは2人称で書かれた小説「嫉妬」や「消しゴム」「覗くひと」などを書いたヌ…

「友よ映画よ、わがヌーヴェル・ヴァーグ誌」を読んで

山田宏一「増補 友よ映画よ、わがヌーヴェル・ヴァーグ誌」(平凡社ライブラリー)が楽しい。500ページもあるのに一気に読んでしまった。山田宏一はフランスに留学し「カイエ・デュ・シネマ」(映画の手帳)の同人となり、ヌーヴェル・ヴァーグの監督たちと…

四方田犬彦「大島渚と日本」の連載が始まった

四方田犬彦「大島渚と日本」の連載が筑摩書房のPR誌「ちくま」2月号から始まった。これは著者によれば「貴種と流転 中上健次」「白土三平論」と並んで、日本論三部作を構成するという。 題名の由来に、大島渚の作品名に「日本」を冠したものが少なくないと…

マノエル・ド・オリヴェイラ監督「夜顔」

マノエル・ド・オリヴェイラ監督「夜顔」を見る。これはルイス・ブニュエル監督「昼顔」の38年後の後日談といった設定。ブニュエルへのオマージュと言える。 「昼顔」は1966年に製作された映画でカトリーヌ・ドヌーヴが主演でヒットした。美しい新婚の人妻セ…

チェン・カイコー「私の紅衛兵時代」の読書会に参加した

読書会なるものに参加した。思うに50年ぶりだ。50年前は村の社会教育主事が青年団員を集めて「空想から科学へ」の読書会を企画したのに参加したことがある。その社会教育主事は「赤い」ということで左遷され、村の小中学校の図書館司書にされた。その後中央…

人は何を見に行くのか

映画や芝居に人は何を見に行くのだろう。以前木冬社の公演には平幹二朗が客演していた。客席はいつも満員だった。木冬社の主宰者兼脚本家の清水邦夫の芝居は長い台詞が多い。木冬社の女優松本典子や平幹二朗の舞台での長いモノローグを聞くことは、まるでオ…

「河童のクゥと夏休み」は21世紀日本映画のベストワン! という評価

演劇評、映画評で最も信頼するぼのぼのさんのブログ「Badlands」に「河童のクゥと夏休み」が紹介された。21世紀に入って作られた日本映画のベストワンだという。ここまで言われたら見ないわけにはいかない。 原恵一が脚本・監督を手がけたアニメーション『河…

映画カメラマンの不思議な常識

映画監督の今村昌平と仕事をしたカメラマンSさんの話を聞いたことがある。彼は「神々の深き欲望」でカメラマンをした。何人ものカメラマンがいて、何番目の階級かは聞き漏らした。日本では末端の助手から始まってだんだん出世していく。最初は三脚運びの役だ…

映画「キサラギ」が面白かった

映画「キサラギ」を見た。普段あまり映画を見ないので偉そうなことは言えないが、5段階評価で☆☆☆☆。「映画・演劇・音楽レビューBadlands」というサイトは、その演劇評が玄人裸足として私が最も信頼しているものだが、そこでこの映画を今年の日本映画の1、…

シャロン・ロックハートの「GOSHOGAOKA」

アメリカ在住のシャロン・ロックハートという女性アーチストがいる。1996年に茨城県守谷市を拠点とするアーティスト・イン・レジデンス・プログラム「アーカスプロジェクト」に参加したシャロン・ロックハートは、守谷市の中学生のバスケットボールチームの…

三島由紀夫の演出術

堂本正樹「回想 回転扉の三島由紀夫」(文春新書)がおもしろかった。著者は劇作家・演出家で16歳のときに8歳年上の三島由紀夫と出会い、三島が亡くなるまで付き合った。 三島がは小説でも成功していたが、芝居も書いていて評判がよかった。「近代能楽集」…