ミステリ

映画『裏切りのサーカス』の原作

書店の平台にハヤカワ文庫の新刊ジョン・ル・カレ『ティンカー、テイラー、ソルジャー、スパイ(新訳版)』が並べられていた。以前、同じハヤカワ文庫から出ていたものは菊池光・訳だったが、これは村上博基・訳になっていた。帯によると、これを原作に作ら…

ジョン・ル・カレ原作のテレビドラマ『偽装の棺桶』

むかし、NHKテレビで『偽装の棺桶』というテレビドラマを見た。イギリスのBBC放送が制作したものをNHKが放映したのだ。原作がスパイ小説の第一人者ジョン・ル・カレだった。脚本がスタンリー・マンだったことを憶えている。 東ドイツから西ドイツに密出国す…

国内ミステリー部門ダントツの第1位『傍聞き』を読む

新聞の書評に紹介されていて読んでみたいと思って買った長岡弘樹『傍聞き(かたえぎき)』(双葉文庫)。買ったけれど、帯の惹句が「おすすめ文庫王国2012国内ミステリー部門ダントツの第1位」「この20年で最高の傑作! 仕掛けと感動の珠玉短編を堪能せよ」…

「死の蔵書」はお薦め

ジョン・ダニング「死の蔵書」(ハヤカワ文庫)を読む。よくできたミステリで堪能した。謎も最後まで分からなかった。主人公の警官が古書のコレクションが趣味というインテリで、そのことが事件と深く絡んでいく。古書に関してあまりにも詳しいのは、あとが…

松屋銀座の「ルパン三世展」を見る〜黒テントのこと〜ル・カレ

松屋銀座の「ルパン三世展」を見た(8月22日まで)。「ルパン三世」はモンキー・パンチによって1967年『漫画アクション』に連載マンガとして始まった。その後1971年にアニメ化される。本展ではマンガの原画、アニメの設定画、セル画、フィギュア、秘蔵資料…

大沢在昌「新宿鮫」を読んだ

大沢在昌の新宿鮫シリーズの最新作「緋回廊 新宿鮫X」(光文社)について、毎日新聞の書評で丸谷才一がほとんど絶賛している(2011年7月17日)。 戦後の日本は多くのすぐれた娯楽読物を持ったけれど、シリーズものの主人公として、新宿鮫はあの剣豪眠狂四郎…

今野敏「半夏生」を読む

今野敏「半夏生」(ハルキ文庫)を読んだ。副題が「東京湾臨海署安積班」とあり、臨海署刑事課強行犯係長安積剛志を主人公とする警察小説だ。先日二十四節気の「半夏生」がカラスビシャクの漢名であることを知って、ネットで調べていたら、今野敏に同名の小…

アイリッシュ「幻の女」を読んで

ウイリアム・アイリッシュ「幻の女」(ハヤカワ文庫)を読む。本書は「ハヤカワ・ミステリ総解説目録1953年−2003年」(早川書房)の読者アンケートの1位に選ばれている。原書は1942年、戦争中に発行された作品で、日本では1950年に翻訳が発行された。冒頭の…

佐々木譲「警官の血」を読んで

佐々木譲「警官の血」(新潮文庫)を読む。文庫で上下巻の2冊、合計940ページある。戦後の昭和23年に警官になった父と、父の後を継いでやはり警官になった子、その後を継いで警官になった孫の、3代にわたる警官人生を描いている。それぞれの核となる事件が…

今野敏「初陣」の読後感

今野敏については、10日ほど前「今野敏『果断』が面白い!」(2010年7月2日)で紹介した。この警察小説は竜崎伸也大森署長を主人公として、「隠蔽捜査」「果断 隠蔽捜査2」「疑心 隠蔽捜査3」と続き、この5月にシリーズ4冊目の「初陣 隠蔽捜査3.5」が…

今野敏「果断」が面白い!

今野敏「果断」(新潮文庫)が面白い。副題が「隠蔽捜査2」と言い、「隠蔽捜査」シリーズ第2作だ。前作も面白かったが、本書はそれ以上に素晴らしい。あんまり面白くて1日で読んでしまった。前作同様主人公は竜崎伸也、今回は大森警察署長に降格されてい…

今野敏「隠蔽捜査」は優れた警察小説だ

今野敏「隠蔽捜査」(新潮文庫)は優れた警察小説だ。読み始めからわくわくさせられる。50ページほど読んだところで、何でこんなつまらないものを読み始めてしまったんだと思った「虐殺器官」(昨日紹介した)とは正反対で、どんどん引き込まれる。ところが…

「向日葵の咲かない夏」への不満

「このミステリがすごい」という賞は不思議な賞で、選ばれた作品が本当に面白かったりものすごくつまらなかったりする。私はミステリの良い読者ではないので偉そうなことは言えないが、「このミス(このミステリがすごい)」の国内版2003年度1位の横山秀夫…