2019-01-01から1年間の記事一覧

若手評論家を批判する荒川洋治

荒川洋治『霧中の読書』(みすず書房)にある評論家についての激しい批判がある。評論家の名前は書かれていない。 最近の批評家の特徴はどんなところにも顔を出し、まことしやかなことを言う点にある。ある若手の批評家は、文芸・学術各誌に登場。石牟礼道子…

荒川洋治『霧中の読書』を読む

荒川洋治『霧中の読書』(みすず書房)を読む。これがとても楽しい読書だった。荒川の最新3年間の書評集。本書を読んでまた何冊も読みたい本ができてしまった。 吉本隆明『詩学叙説』は『言語にとって美とはなにか』から41年後、平成18年の詩論集。散文は「…

ガレリア・グラフィカbisのLu Chin-Yun個展が興味深い

東京銀座のガレリア・グラフィカbisでLu Chin-Yun個展が開かれている(11月30日まで)。これがとても興味深い。なお、Lu Chin-Yunはルー チンユンと読み、漢字が蘆之〇だが、〇は竹冠に均と書く。Luは1984年日本生まれ、2007年に国立台湾藝術大学美術学部彫…

アートトレースギャラリーでヒッシ―の作品を見る

東京両国のアートトレースギャラリーで「進行と方法」というグループ展が開かれている(12月3日まで)。坂光敏(1977)、倉持幸子(1979)、ヒッシー(1976)、中谷真理子(1992)、前川加奈(1984)、有原友一(1976)の6人だ(数字は生年)。このうちヒッ…

ギャルリー東京ユマニテbisの石井紀湖展「森の迷宮」を見る

東京京橋のギャルリー東京ユマニテbisで石井紀湖展「森の迷宮」が開かれている(12月7日まで)。石井は東京藝術大学彫刻科を卒業し、大学院を修了している。最近はうしお画廊で個展をしているが、その前はみゆき画廊で、さらにその前はギャラリー山口で個展…

山本弘の作品解説(92)「河童」(仮題)

山本弘「河童」(仮題)、油彩、F4号(33.5cm×24.3cm) 制作年不詳。ただサインから晩年の作品であることが分かる。河童を描いている。背に甲羅を背負い、頭に皿が描かれている。子供のように下腹が膨らんでいる。ユーモラスな姿だ。 山本は絵は売れなかっ…

川合光『はじめての《超ひも理論》』を読んで

川合光『はじめての《超ひも理論》』(講談社現代新書)を読む。副題が「宇宙・力・時間の謎を解く」とある。一応読んだと書いたが、実は極めて難解な本で、内容はほとんど理解できなかった。ところどころ興味をひかれた部分があったくらい。もう多次元宇宙…

長谷川眞理子の書評から

朝日新聞の読書欄でジェラルディン・マコックランの『世界のはての少年』(東京創元社)について人類学者の長谷川眞理子が書評を書いている。 読み始めたら止まらず、読み終わったあとの衝撃と悲しみ。ものすごい話である。そして、これは実話に基づく物語な…

s+artsの大矢雅章展 ‘View-life force’を見る

東京六本木のs+artsで大矢雅章展 ‘View-life force’が開かれている(11月24日まで)。大矢は1972年神奈川県生まれ、1998年に多摩美術大学大学院美術研究科絵画専攻を修了している。その後文化庁新進芸術家インターンシップ研修員制度により加納光於氏に師事…

JINENギャラリーの本山智香子展「-BONES-」を見る

東京日本橋小伝馬町のJINENギャラリーで本山智香子展「-BONES-」が開かれている(11月24日まで)。本山は1989年東京都出身。2014年に東京藝術大学美術学部絵画科油画専攻を卒業し、2016年に同大学大学院油画・技法材料第一研究室を修了している。2013年から…

コバヤシ画廊の野沢二郎展「空のふちで」を見る

東京銀座のコバヤシ画廊で野沢二郎展「空のふちで」が開かれている(11月23日まで)。野沢は茨城県生まれ、1982年に筑波大学大学院を修了している。これまで「VOCA展'97」や同年の「バングラデシュ. アジア美術ビエンエーレ」に参加し、2012年はDIC川村記念…

ギャラリー檜Fのシマヅヨウ彫刻展「生き物の感じ」を見る

東京京橋のギャラリー檜Fでシマヅヨウ彫刻展「生き物の感じ」が開かれている(11月23日まで)。シマヅは1962年兵庫県生まれ、1986年に武蔵野美術短期大学専攻科を修了している。1986年より個展を続けているという。最近はここギャラリー檜Fで開いている。DM…

アメリカインディアン酋長シアトルの美しいメッセージ

ル・クレジオの『歌の祭り』(岩波書店)にアメリカインディアンの酋長シアトルの美しい言葉が紹介されている。以前もここに紹介したが、あまりにも素晴らしいので再掲する。 1855年、諸部族連合会議において、先住民の土地を買い上げようというアメリカ政府…

山本浩貴『現代美術史』を読む

山本浩貴『現代美術史』(中公新書)を読む。これがとても素晴らしい。副題が「欧米、日本、トランスナショナル」となっていて、欧米の現代美術にも詳しく、日本の現代美術の扱いも驚くほど詳細に目配りしている。履歴を見ると33歳の若手研究者で、一橋大学…

櫻木画廊の杉原民子展を見る

東京上野桜木の櫻木画廊で杉原民子展が開かれている(11月24日まで)。杉原は佐賀県出身、東京オリンピックの年に生まれたという。1998年以来、OギャラリーUP・SやギャラリーTEMS、Shonandai My ギャラリーなど多くのギャラリーでもう20回近く個展を開いてい…

ガルリSOLのコミタク個展を見る

東京銀座のガルリSOLでコミタク個展「TOY BOX」が開かれている(11月16日まで)。本名小見拓、1991年新潟生まれ、2017年武蔵野美術大学造形学部彫刻学科を卒業、2019年東京藝術大学大学院美術研究科彫刻専攻を修了している。2014年ギャラリー檜で初個展、以…

ギャラリイKの戸張花と巷房2の柴崎和也展を見る

東京京橋のギャラリイKで「磨。溶。繋。」が、同じく銀座の巷房2で柴崎和也展が開かれている(どちらも11月16日まで)。 「磨。溶。繋。」は伊東杏吏、戸張花、村上直樹が鉄の立体を展示しているが、ここでは戸張を取り上げる。戸張花は1993年東京都出身、2…

コバヤシ画廊の西成田洋子展「記憶の領域2019」を見る

東京銀座のコバヤシ画廊で西成田洋子展「記憶の領域2019」が開かれている(11月16日まで)。西成田は1953年茨城県生まれ、1987年より東京、水戸、ニューヨークなどでもう30回以上も個展を開いている。作品は大きな奇妙な立体で、古着などを縫い合わせて造形…

TOWEDの「もう無い図形」を見る

東京曳舟のギャラリーTOWEDで「もう無い図形 内田百合香・福士千裕 二人展」が開かれている(11月24日まで)。二人の履歴をホームページから引く。 内田は画家。1990年生まれ、神奈川県出身。中国:日本=4:1のクォーター。2013年に船戸厚志と「春のカド」…

ギャラリー古今の瀧田亜子新作展「陽光の洗足池」を見る

東京大田区洗足池のギャラリー古今で瀧田亜子新作展が開かれている(11月10日まで)。瀧田は1972年東京都生まれ。2年間ほど中国へ留学し書を学んできた。2003年ギャラリー・オカベで初個展、以来、なびす画廊での個展を中心に銀座の画廊で発表を繰り返してき…

ギャラリー砂翁の及川伸一展「-のようなもの―」を見る

東京三越前のギャラリー砂翁で及川伸一展「-のようなもの―」が開かれている(11月16日まで)。及川は1949年東京生まれ。1980年から1992年まで独立美術に出品していたが、1992年からは個展を主な発表の場所としている。これまでギャラリー汲美、ギャラリーテ…

田村隆一『詩人の旅 増補新版』を読む

田村隆一『詩人の旅 増補新版』(中公文庫)を読む。「増補新版」というのは、1991年の中公文庫版に「北海道――釧路」を追加したもの。旅行記で、他に隠岐、若狭、伊那、奥津、鹿児島、越前、越後、佐久、浅草、京都、沖縄が収録されている。 このうち、「伊…

ギャラリー椿の夏目麻麦展「-scape」を見る

東京京橋のギャラリー椿で夏目麻麦展「-scape」が開かれている(11月16日まで)。夏目は1971年生まれ、1998年に多摩美術大学大学院を修了している。その年にギャラリーQで初個展、以後ベルギーや東京の西瓜糖、藍画廊、Porte de Paris、ギャラリー椿などで個…

中村稔『むすび・言葉について 30章』を読む

中村稔『むすび・言葉について 30章』(制度社)を読む。言葉をテーマにした詩(14行詩)が30篇収録されている。言葉をテーマと書いたが、言葉の本質、機能、生態などの省察を14行詩の形式で表現した詩集『言葉について』20章、『新輯・言葉について 50章』…

林達夫・久野収『思想のドラマトゥルギー』を読む

林達夫・久野収『思想のドラマトゥルギー』(平凡社)を読む。二人の対談集だが、久野が聞き手となっている。略歴には林が西洋精神史研究家、久野が哲学者となっている。 1974年の発行直後に買って読み、その20年後に読み直し、今回が3回目となる。林の西洋…

スカイ・ザ・バスハウスのアルフレッド・ジャー展を見る

東京上野桜木のスカイ・ザ・バスハウスでアルフレッド・ジャー展が開かれている(11月2日まで)。ジャーは1956年チリ生まれ。 《You Do Not Take a Photograph, You Make It. (写真は撮るものではなく、創造するものだ)》-アンセル・アダムズ 《Be Afraid…

アートラボ・トーキョーの柳井嗣雄展「遺物」シリーズ―Fiber Drawing-を見る

東京浅草橋のアートラボ・トーキョーで柳井嗣雄展「遺物」シリーズ―Fiber Drawing-が開かれている(11月2日まで)。柳井は1953年山口県萩市生まれ、1977年に創形美術学校版画科を卒業している。1980年にギャラリー21で初個展、以来個展を多数回開いている。…

櫻木画廊の中津川浩章展「神話の森」を見る

東京上野桜木の櫻木画廊で中津川浩章展「神話の森」が開かれている(11月10日まで)。中津川は1958年静岡県生まれ。和光大学で学び、個展をギャラリイK、パーソナルギャラリー地中海などで数回ずつ開き、その他、ギャラリーJin、ギャラリー日鉱、マキイマサ…

植松黎『カラー図説 毒草の誘惑』を読む

植松黎『カラー図説 毒草の誘惑』(講談社+α文庫)を読む。40種類の毒草が取り上げられている。毒草=有毒植物の図鑑であるが、エッセイとして面白く優れている。この人なら何を書いても面白いだろうと思わせるほどだ。 ケシについては20ページを費やして、…

野木萌葱 作『三億円事件』をシアター711で見る

野木萌葱 作『三億円事件』を下北沢のシアター711で見た(10月15日)。ウォーキング・スタッフ プロデュース、和田典明 演出。 三億円事件は1968年に府中市で実際に起こった現金3億円強奪事件。事件は7年後時効になった。芝居は時効3カ月前の府中署の特別捜…