2009-01-01から1年間の記事一覧

「ぼくらの頭脳の鍛え方」が面白い

立花隆・佐藤優の「ぼくらの頭脳の鍛え方」(文春新書)が面白い。副題が「必読の教養書400冊」で、それはすごいブックリストだ。そして同時に二人が語るエピソードがチョー受ける。特に佐藤優の暴露するスキャンダルが抱腹絶倒ものだ。 佐藤 中江兆民につい…

門田秀雄さんが紹介する入江比呂

門田秀雄さんは私が尊敬する美術評論家だ。11月19日付けの日経新聞文化欄に「美術史から消えた”労働者”」という門田さんのエッセイが掲載された。副題が「弾圧受けたプロレタリア美術、戦後の空白を追う」とある。 岡本唐貴と入江比呂。といっても、わかる方…

ギャラリー現の古澤信二展

銀座1丁目のギャラリー現の古澤信二展が面白かった(昨28日まで)。古澤は独特の手法で作品を作っている。絵筆の代わりに木片を使うのだ。作品に貼り付けられているのがその木片−−2cm角くらいの小さな角材だ。絵の具を塗った画面をこの角材でこする。それ…

田淵安一亡くなる

朝日新聞の逝去記事から(11月25日夕刊) 田淵安一さん(たぶち・やすかず=画家)24日、心不全のためパリ郊外の自宅で死去、88歳。通夜、葬儀は未定。 北九州市出身、東洋的な感性による色彩鮮やかな抽象画で知られた。猪熊弦一郎の研究所で油彩画を学び、5…

野見山暁治の画家たちに対する寸評

野見山暁治の「続アトリエ日記」(清流出版)が面白い。楽しい。画家に対する寸評がとても興味深い。毎日雑用に追われている。こんなに忙しくていつ絵を描くのだろう。その画家たちに対する寸評を拾ってみた。 昼前の飛行機に乗って、早めに久留米の美術館に…

「画廊るたん」で林正彦展を見る

銀座6丁目の画廊るたんで林正彦展が開かれている(11月28日まで)。林は1953年長野県飯田市生まれ。絵の具ではなく赤土を使って作品を作っている。ただ前回の個展あたりから麻袋(ドンゴロス)を使い始めた。今回からは漆も使っている。画面の黒色が漆だと…

長谷川健司と内海信彦、千里の馬と伯楽

先週東京都中央区京橋のギャラリイKで長谷川健司展があった。展示作品を撮影する機会がなかったので、ネットに掲載されている作品を紹介する。 長谷川健司は1988年生まれ、まだ21歳だ。現在美学校で内海信彦に師事しているという。絵画を学び始めてまだ1年…

晩秋のハイキング

晩秋のある日、友人の旧居跡を訪ねた。それは長野県南部の飯田市の西に位置する風越山(ふうえつざん、かざこしやま)の中麓にある。風越山は姿のきれいな山だ。地元では権現山とも呼ばれている。山頂に白山権現が祭られているからだ。 飯田駅の南側から丸山…

吉川英治記念館の作間敏宏展

奥多摩の青梅市で「第7回アートプログラム青梅」が開かれている(11月23日まで)。青梅市内の各地で牛島達治、斎藤美奈子、戸谷成雄、母袋俊也、吉野辰海などベテラン作家12名に加えて、多摩美、武蔵美、造形大、明星大の4大学の学生も加わって、「空間の…

ギャラリー・ビー・トウキョウの松本真由子展

中央区京橋のギャラリー・ビー・トウキョウで松本真由子展「Delicate island」が開かれていた(11月21日まで)。 松本真由子は面白い作品を描いている。ギャラリーの床に直接並べられた作品はすべて動物の形のキャンバス(ボード?)で、そこに肉が描かれて…

「やかましい」「うるさい」どう違う?

新聞に掲載された岩波書店の「岩波国語辞典 第七版」の広告。 「やかましい」「うるさい」どう違う? やかましい【喧しい】《形》1.不快に感ずるほど声・音が大きい。……→うるさい。…… うるさい【煩い・〈五月蠅〉い】《形》1.わずらわしい(感じだ)。面…

喬木村、河岸段丘と縄文遺跡

写真は長野県南部の飯田市から真東を見た風景。天竜川が北から南に向かって流れている。写真では左が川上であり北の方向になる。画面の下方に見えるのが天竜川で、手前は水田地帯となっている飯田市の平地だ。正面が喬木村(たかぎむら)、私が生まれ育った…

ギャラリー山口の石川奈緒美彫刻展

中央区京橋のギャラリー山口(地下)で石川奈緒美展が開かれている(11月21日まで)。石川は1985年、岩手県生まれ、日本大学藝術学部の彫刻コースを卒業している。初個展だ。 作品は大きな3点の鉄の彫刻だ。鉄板を溶接して大きな板にする。それからこの形を…

ギャラリー山口の小松浩子写真展

中央区京橋のギャラリー山口で小松浩子の写真展が開かれている(11月21日まで)。これがとても興味深いものなのだ。久しぶりにヒットした写真展。 どこかの工場を撮っている。大きなモノクロ写真で、自分で現像プリントしているという。35mmフィルム、トライ…

南信州の晩秋

長野県南部の飯田市に北側で隣接する高森町へ行った。その晩秋の植物を撮影してきた。 まず、りんご園。飯田市はりんご並木で有名だ。 ここは市田柿の本場。 黄と赤の菊2種。(決して悪い意味ではなく)田舎の菊だ。 紅葉。 ピラカンサ、これは学名の属名。…

東京スカイツリーが200メートルを超えた

11月12日、東京スカイツリーが200メートルを超えた。 http://www.tokyo-skytree.jp/ 40日間で40メートル高くなったようだ。これは11月16日の朝撮った写真。こんなに高いところで作業するのはとても恐いことだろう。しかし、熊谷組に勤めていた従兄によれば、…

ヒュッシュでシューベルト《冬の旅》を聴く

吉田秀和「改めて、また満たされる喜び」(朝日新聞社)に「シューベルトの響き」と題する1995年に書かれた章がある。その途中から引用する。 (シューベルトの)《冬の旅》は気安くきける音楽ではない。私にとって《冬の旅》は、戦後間もなく、たしか帝国劇…

ギャラリー58で吉田公美展が開かれている

銀座4丁目のギャラリー58で吉田公美の彫刻展が開かれている(今日の11月14日まで)。昨年の個展は、「ギャラリー58の吉田公美展は注目だ」(2008年11月6日)で紹介した。今年も大きな金属の立体を展示している。ビルの4階にあるギャラリーまで運び込むの…

メニューヒン、天才児の行方

吉田秀和「改めて、また満たされる喜び−ー新・音楽展望1994−1996」(朝日新聞社)を読んだ。「音楽展望」のタイトルで朝日新聞に連載されたもの。吉田秀和を読むのはいつでも教えられることが多く楽しい。それは音楽に限らない。谷崎潤一郎の口述筆記をした…

加藤陽子『それでも、日本人は「戦争」を選んだ』の面白さ!

加藤陽子『それでも、日本人は「戦争」を選んだ』(朝日出版社)が売れているらしい。読んでみたら売れている理由が分かった。とにかく面白いのだ。これは加藤が栄光学園の中学1年から高校2年までの歴史研究部のメンバー20人ほどを前に5日間にわたって講…

小津安二郎の「秋日和」

岡田茉莉子の自伝「女優 岡田茉莉子」(文藝春秋)が出版されたのを記念して、ポレポレ東中野で岡田茉莉子特集が組まれている。先日そこで小津安二郎の「秋日和」を見た。劇場で小津を見たのは初めてだった。45年ほど前に何作かテレビで見ていた記憶がある。…

岡井隆「私の戦後短歌史」が面白い

岡井隆「私の戦後短歌史」(角川書店)がとても面白い。小高賢が聞き手になった聞き書きなので読みやすいし、岡井は率直に語っている。タイトルどおり戦後短歌史がよく分かる。 岡井 近藤(芳美)さんはね、じつは「アララギ」の大きな異端だったのですよ。…

南Q太「スロウ」は過激か

南Q太は吉田秋生とともに好きなマンガ家だ。二人とも男みたいな名前だが女性だ。同性愛を取り上げるところも似ている。南Q太「スロウ」(祥伝社)はレズの子が主人公だ。成就することのない切ない愛が描かれるが、内容は18禁だ。智明(ちあき)は高校の後輩…

岡田茉莉子の自伝「女優 岡田茉莉子」を読んで

先月末に発行された岡田茉莉子著「女優 岡田茉莉子」(文藝春秋)を読んだ。カバー(英語でjacket)のデザインがいい。背表紙の標題の文字は大きすぎて品がない。表紙(英語でcover)のデザインは良くない。女優の伝記なのに口絵写真がない。女優 岡田茉莉子…

一人のための向井山朋子ピアノリサイタル

いささか古い話だが、2004年にnca(日動画廊コンテンポラリーアート)が主催する向井山朋子ピアノリサイタル「For You」を聴いた。とても変わった企画で、観客たった一人のための演奏会だった。ただし一人あたり約10分ほどの演奏。料金が1,500円だった。客は…

ケーターハム・セブンが停まっていた

銀座和光の裏手に小型の見慣れない車が走ってきて停まった。運転している渋い中年男性にこれは何の車かと聞くと、イギリスのメーカーのケーターハムだという。許可を得て写真を撮らせてもらい、帰宅して調べた。 Wikipediaによれば、イギリスの小規模自動車…

壺に入れば抱くのは私

朝日新聞の連載に「恋する大人の短歌教室」というコラムがある。読者が投稿した短歌を石井辰彦さんが添削するという趣旨。11月2日に東京のあべまりあさんの作品が掲載されていた。ここに掲載するのは添削されたあとのもの。 女好き 女も惚れた夫だが壺に入…

田端麻子の不思議な個展

銀座1丁目のOギャラリーUP・Sで田端麻子の個展が開かれている(11月8日まで)。田端麻子は不思議な絵を描く画家だ。一見すると岸田劉生のような少し古い近代絵画を思わせる。しかし色彩は現代のものだ。あるいは中村正義をを連想するかもしれない。多くの…

今年もなびす画廊で新井コー児展が始まった

昨年「なびす画廊の新井コー児展が面白い」(2008年11月5日)を書いたが、今年もまた彼の個展が始まった(11月7日まで)。今回も昭和40年代を描いている。 「賑やかな朝の訪問者」は雀が囀っているらしい。パジャマの女子高生はレコードプレーヤーで吉田拓…

井伏鱒二とつげ義春の類似性

つげ義春が井伏鱒二の小説を好み、地方へ行ったら井伏の小説のような経験ができるかと思ったと書いていた。今度40年振りに井伏鱒二の「山椒魚」(新潮文庫)を読み直してみたら本当に驚くほど似ている。 まず井伏鱒二の「言葉について」から、 日本海の××島…